柳町 (佐賀市)

佐賀市柳町：歴史と文化が息づく城下町の面影

柳町は、佐賀県佐賀市の中心部に位置する歴史的な地名です。かつて佐賀城の城下町として栄え、現在もその面影を色濃く残しています。佐賀市歴史民俗館をはじめとする歴史的建造物が多く点在し、長崎街道沿いの街並みは「長崎街道・柳町景観形成地区」として景観形成基準が定められ、保全されています。

地理と景観

柳町は、佐賀市中心部の東側に位置し、紺屋川と裏十間川に囲まれたエリアです。地区の中央を東西に柳町通り（旧長崎街道）が走り、周辺には高木町、東佐賀町、材木、松原、呉服元町などの町が隣接しています。この地域は、江戸時代の佐賀城下町の重要な一部であり、その歴史的な景観は、訪れる人々に深い印象を与えます。

2022年には、紺屋川沿いに柳町思案橋広場が整備され、江戸時代の船着き場跡の石垣護岸などの遺構が保存・活用されています。この広場は、歴史的な景観を体験できる新たなスポットとして注目されています。

歴史

柳町の名前は、寛政元年（1789年）の幕府巡検使への報告に初めて登場します。承応3年（1654年）の佐賀城廻之絵図にはその名が見られないことから、この時期以降に町が成立したと考えられています。長崎街道が東西に走り、街道沿いに家並みが形成され、西は蓮池町、東は牛島町に接していました。現在の柳町は、城下町の柳町、上今宿町の全域、および蓮池町の一部にあたります。

江戸時代には、柳町と上今宿町にはそれぞれ木戸が設けられ、町の出入りを管理していました。元文5年（1740年）の記録によると、柳町には47軒、上今宿町には30軒の屋敷がありました。嘉永7年（1854年）の柳町竈帳によれば、柳町には49の竈と222人の人々が暮らし、上今宿町には26の竈と117人が暮らしていました。職業別に見ると、古道具屋、太物屋、仕立屋、桶屋、提灯屋など、多様な職種の商人がいたことがわかります。

慶長13年（1608年）には、ドミニコ会の神父アロンソ・デ・メナが、鍋島勝茂の許可と元佶和尚の援助を得て南蛮寺を建設しました。しかし、慶長17年（1612年）のキリシタン禁教令の影響により、教会は取り壊され、神父は追放されました。

寛永3年（1626年）から正保年間（1644 - 48年）の間に紺屋川に思案橋が架けられ、長崎街道の経路が変更されました。紺屋川では水運も行われ、思案橋付近には荷上場が設けられました。この地域は、蔦屋、釜屋、角屋などの商家が立ち並び、市もたつなど、大正時代ごろまで商人町として栄えました。

明治時代に入ると、三省社や古賀銀行が設立され、柳町は更なる発展を遂げました。上今宿町の地名は明治以降には見られなくなることから、この頃に柳町に吸収されたと考えられています。1889年（明治22年）の市制施行により佐賀市に所属し、1968年（昭和43年）には県道30号線の開通により千代町の一部を合併し、現在の区域となりました。

文化と現代の息吹

柳町には、専福寺や八坂神社などの寺社も存在します。専福寺には、佐賀における蘭学の先駆者である島本良順の墓があり、八坂神社には樹齢600年とも言われる大楠があります。これらの寺社は、地域の歴史と文化を今に伝える貴重な存在です。

近年では、歴史民俗館の旧久富家や旧森永家がリノベーションされ、IT企業が運営するものづくりカフェや和紅茶屋、伝統工芸店などが古民家を活かした商いを営んでいます。これらの新しい動きは、柳町に新たな魅力をもたらし、地域経済の活性化に貢献しています。

著名な人物

柳町を含む蓮池町出身の中牟田倉之助は、海軍中将として活躍し、子爵の位を授けられました。彼は、東海鎮守府長官や海軍大学校長などを歴任し、日本の海軍の発展に大きく貢献しました。

柳町は、その歴史的な景観と文化、そして現代の新しい息吹が融合した魅力的な地区です。佐賀市を訪れる際には、ぜひ柳町を散策し、その歴史と文化に触れてみてください。

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