栖本親高

栖本親高：天草のキリシタン武将、激動の生涯

栖本親高（すもと ちかたか）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、キリシタンでもありました。肥後国天草郡の栖本城主であり、栖本氏の13代目当主を務めました。

天草五人衆の一人として

栖本氏は、肥後天草諸島を支配した国人衆「天草五人衆」の一角を担っていました。その出自は菊池氏の庶流とされています。当時の天草は、中央の支配が及びにくい独立性の強い地域であり、五人衆は互いに連携し、時には対立しながら、その勢力を維持していました。

豊臣秀吉による九州平定の際、親高は他の天草五人衆と共に秀吉に臣従し、本領を安堵されました。これにより、一時的に平穏な時代を迎えます。

天草国人一揆と小西行長への従属

しかし、平穏は長くは続きませんでした。天正17年（1589年）、小西行長が宇土城で城普請を命じた際、これに反発した志岐鎮経や天草種元らが反乱を起こします（天草国人一揆）。親高もこの一揆に呼応しましたが、小西行長や援軍として駆けつけた加藤清正の軍勢に敗れ、降伏を余儀なくされました。

降伏後、親高は小西行長に臣従することになります。同年には受洗し、キリシタンとなりました。この背景には、小西行長が熱心なキリシタン大名であったことが影響していると考えられます。当時の武将がキリスト教に入信する背景には、信仰的な理由だけでなく、政治的な思惑や国際的な交易への期待なども複雑に絡み合っていました。

文禄・慶長の役と梅北一揆での戦死

その後、親高は文禄・慶長の役で小西行長に従って朝鮮半島に出陣します。この戦役で、弟である通隆が戦死するという悲劇に見舞われました。さらに、文禄元年（1592年）には、梅北一揆と呼ばれる反乱鎮圧のために出陣し、自身も戦死するという悲劇的な最期を遂げました。

栖本親高の死後

栖本親高の死後、栖本氏は没落したと考えられます。しかし、その血筋は残り、江戸時代には子孫が阿部一族に仕えたとされています。

後世への影響

栖本親高は、天草の歴史において重要な役割を果たした人物の一人です。天草五人衆の一人として、戦国時代の激動を生き抜き、豊臣秀吉や小西行長といった時代の権力者たちとの関わりを持ちました。また、キリシタン大名としても知られ、当時のキリスト教文化の広がりを示す事例の一つとして捉えられています。

関連作品

『阿部一族』：森鴎外の小説。作中に登場する「柄本又七郎」は、栖本通隆の孫にあたるとされています。

出典

鶴田文史編著『西海のキリシタン文化綜覧』（天草文化出版社、1983年）

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