桓偉

桓偉（かん い）

桓偉（生年不詳 - 403年）は、東晋末期の動乱期に活躍した軍人であり政治家です。字は幼道といい、譙国竜亢県（現在の安徽省一帯）の出身です。彼は、東晋において強大な権勢を誇った大司馬・桓温の子として生まれ、桓氏一族の一員として東晋の政治に深く関与しました。

生涯

桓偉は、東晋王朝に仕え、その政治的、軍事的キャリアを重ねました。隆安3年（399年）には、南蛮校尉の任を引き継ぎ、輔国将軍に任じられます。この頃、荊州刺史であった殷仲堪が東晋に対して反乱を企て、これに対し江州刺史の桓玄が討伐軍を率いて進軍しました。桓玄は密かに桓偉に内応を促しましたが、桓偉は事情を知らず、殷仲堪に対して桓玄らと戦う意思を表明してしまいます。これにより桓偉は殷仲堪に捕らえられ、桓玄に味方するよう説得されますが、これを拒否し、捕われの身となりました。

隆安4年（400年）には、冠軍将軍・雍州刺史に任じられます。さらに、隆安5年（401年）には、桓玄の上表により江州刺史に任じられ、夏口に拠点を構えました。元興元年（402年）には、桓玄から江陵の守備を任され、驃騎大将軍司馬元顕の討伐に参加します。

元興2年（403年）には、安西将軍・使持節・都督荊益寧秦梁五州諸軍事・南蛮校尉・荊州刺史に任じられ、西昌侯に封じられました。しかし、同年8月に亡くなりました。その功績により、開府儀同三司・驃騎将軍を贈位され、爵位は桓玄が継承しました。桓楚が建国されると、大将軍・侍中を贈位され、義興郡王に封じられ、子の桓浚が爵位を継ぎました。

人物・逸話

桓偉は、情に厚く誠実な人柄であり、その統治下にあった領民から深く慕われていました。桓偉が殷仲堪に捕らえられた際、桓玄は殷仲堪の優柔不断な性格を見抜き、桓偉の身に危険はないと予測しました。実際に殷仲堪の死後、桓偉は無事に解放され、桓玄の予測は的中しました。

桓偉の死後、桓玄は彼の死を悼み、喪に服すにあたって楽曲を作らせました。桓玄はその曲を歌いながら慟哭し、涙を抑えてはまた大いに楽しんだと伝えられています。桓偉は桓玄にとって唯一親任できる存在であり、桓玄は彼を失ったことで、今後誰を信任すればよいのかを危惧したとされています。桓玄は桓偉の葬儀の日、朝は慟哭し、夜は大いに楽しむなど、常軌を逸した行動を見せ、馬を走らせるほどに彼の死を悼みました。

家系

父：桓温
兄弟：
桓熙 - 字は伯道
桓済 - 字は仲道
桓歆 - 字は叔道
桓禕 - 字は季道
桓玄 - 字は敬道
子女：桓浚

参考文献

『晋書』巻98、巻99
『資治通鑑』巻111-巻113

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