棘鰭上目

棘鰭上目（Acanthopterygii）

棘鰭上目は、条鰭綱に属する硬骨魚類の一分類群で、スズキ目やカサゴ目など、多岐にわたる13目、267科、2,422属を含む巨大なグループです。その種数は魚類全体の約半数にあたる14,797種にも及びます。棘鰭上目の魚は、鰭に棘条と呼ばれる硬い棘状の支持構造を持つことが大きな特徴です。

概要

棘鰭上目は、真骨類の中で最も進化を遂げたグループとされ、淡水魚も多く含みます。他の真骨類と比較すると、前上[[顎骨]]の突起が発達しており、上顎の可動性が高いことが特徴です。ただし、一部の系統では、顎を前方に突き出す能力が退化している場合もあります。

形態的な特徴としては、以下の点が挙げられます。

上顎の可動性
鰭（特に背鰭・腹鰭・臀鰭）に棘条を持つこと
浮き袋に気道を持たないこと
ほとんどの種類で、上擬鎖骨を経由して胸鰭の骨格を支える靱帯（Baudelot's ligament）が基後頭骨から起始すること（ただし、クジラウオ目など一部のグループでは、この靱帯は第一脊椎と連続）

分類

棘鰭上目の分類は、研究者によって様々な変遷をたどってきました。

1966年、Greenwoodらは、トウゴロウイワシ目などを含むトウゴロウイワシ系と、当時の「棘鰭類」（現在のスズキ系）を並置しました。
1969-73年、Rosenが両グループを統合し、棘鰭上目として定義しました。
* 1993年、JohnsonとPattersonは、クジラウオ目を最も原始的な棘鰭類とみなし、マトウダイ目、キンメダイ目をそれに続く位置に置きました。さらに、ボラ系、トウゴロウイワシ系、トゲウオ目、タウナギ目、エラッソマ科（スズキ目）を「Smegmamorpha」としてまとめましたが、分子生物学的解析により、このグループの単系統性は否定されています。

現在でも、棘鰭類の分類体系は確定的なものではなく、見直しの必要性が指摘されています。Nelson（2006）は、分子生物学的解析の結果を踏まえ、包括的な再分類の必要性を提唱しています。

棘鰭上目は、大きく以下の3つのグループに分けられます。

1. ボラ系（Mugilomorpha）：ボラ目のみが所属
2. トウゴロウイワシ系（Atherinomorpha）：トウゴロウイワシ目、ダツ目、カダヤシ目など
3. スズキ系（Percomorpha）：クジラウオ目、キンメダイ目、マトウダイ目、トゲウオ目、タウナギ目、カサゴ目、スズキ目、カレイ目、フグ目など

ボラ系（Mugilomorpha）

ボラ目のみで構成され、ボラ類が含まれます。スズキ目に含める見解もありますが、ここではトウゴロウイワシ系の姉妹群として位置付けられています。

トウゴロウイワシ系（Atherinomorpha）

1960年代に定義されたグループで、その単系統性は広く支持されています。表層生活をする魚が多く、淡水・汽水域に生息する種が75%を占めます。体内受精や単性生殖など、繁殖様式が多様であること、卵や精巣の形態に特徴があることが、他のグループには見られない特徴です。

スズキ系（Percomorpha）

非常に大きなグループで、多様な魚種が含まれます。肩帯が烏口骨または擬鎖骨と連続するなど共通の特徴を持ちますが、単系統性については議論があります。

棘鰭上目は、その多様性と進化の過程において、魚類の世界を理解する上で重要な位置を占めています。今後の研究によって、その分類体系がより明確になることが期待されます。

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