カサゴ目

カサゴ目：多様な深海魚の宝庫

カサゴ目（Scorpaeniformes）は、スズキ目、コイ目、ナマズ目に次ぐ、硬骨魚類の大きな分類群です。約1,477種もの多様な魚類が所属し、その形態や生態は驚くほど多様性に富んでいます。カジカ目と呼ばれることもあります。

広い分布域と多様な生息環境

カサゴ目の魚類は、極圏を含む世界中の海に分布しており、沿岸から水深7,000mを超える超深海まで、幅広い水深に生息しています。温帯から熱帯の暖かい海を好む種類もいれば、北太平洋のような寒冷な海域に生息する種類もいます。中には、淡水域に進出する種も存在します。

多様な形態

カサゴ目の仲間は、その形態も実に多様です。例えば、フサカサゴ科の魚類は、頭部にトゲや骨質の隆起を持ち、いかつい風貌をしています。一方、ホウボウ科の魚類は指のような胸鰭を使って海底を歩きます。コチ科は頭部が平たくつぶれた独特の姿をしています。また、クサウオ科の仲間は、ぬるぬるした柔軟な体を持っています。体色も多様で、食用魚として人気のあるメバルやホッケ、ギンダラなどが含まれる一方で、ミノカサゴのように鮮やかな色彩を持つ観賞魚も数多く存在します。

眼下骨棚：カサゴ目の定義

カサゴ目を特徴付ける重要な形態学的特徴として「眼下骨棚」があります。これは眼窩（がんか）を取り囲む骨の一部がトゲ状に後方に伸びた構造です。しかし、この眼下骨棚は、複数の異なるグループが独自に進化させた形質である可能性も指摘されており、カサゴ目の単系統性については現在も議論が続いています。

生態

多くのカサゴ目の魚類は底生魚で、海底でじっとして生活しています。岩礁域、サンゴ礁、砂泥底など、様々な生息環境に適応しています。ほとんどの種類は肉食性で、ゴカイ、貝類、甲殻類、小魚などを捕食します。

人との関わり

カサゴ目の魚類は、重要な食用資源として古くから利用されてきました。メバル、ホッケ、ギンダラなどは特に重要な漁業対象種です。一方で、ハオコゼ、ミノカサゴ、オニオコゼなど、鰭の棘条に毒を持つ種類もあり、刺されると強い痛みを感じ、場合によっては死に至ることもあります。

分類

カサゴ目は7亜目26科279属に分類されます。その分類体系は、現在も研究が進められており、新たな知見に基づき、今後変更される可能性があります。例えば、セミホウボウ亜目については、独立の「セミホウボウ目」として扱うべきという意見もあります。

主要な亜目と科

カサゴ目は、以下の亜目や科に分類されます。それぞれの科には、さらに多くの属と種が含まれています。以下では代表的な科について簡単に紹介します。

カサゴ亜目: カサゴ、メバル、オニオコゼなど。食用魚や観賞魚として人気が高い種類も多い。毒を持つ種類も存在します。
フサカサゴ科: 多様な種類を含む大きなグループ。多くの水産重要種が含まれています。
メバル亜科: メバルなどの種類を含む。
ハオコゼ亜科: ハオコゼなど、毒を持つ種類が多い。
オニオコゼ亜科: オニオコゼなど、強力な毒を持つ危険な魚類を含む。
コチ亜目: コチ、ホウボウなど。砂泥底に潜る種類が多い。
ホウボウ科: 指のような胸鰭で海底を歩く。
コチ科: 頭部が平たく、砂に潜る習性を持つ。
ギンダラ亜目: ギンダラ、アブラボウズなど。大型で脂肪分が多い。
アイナメ亜目: アイナメ、ホッケなど。北部太平洋に分布する。
カジカ亜目: カジカなど。淡水から深海まで多様な環境に生息。
カジカ科: カジカなど、多くの種類を含む。淡水種も多い。
ダンゴウオ上科: ダンゴウオなど。吸盤状の腹鰭を持つ。
ダンゴウオ科: 丸っこい体形で、吸盤状の腹鰭を持つ。
* クサウオ科: ぬるぬるした体で、深海に生息する種類が多い。

本稿では、カサゴ目の概要と主要なグループについて解説しました。カサゴ目は、その多様性と複雑な分類体系から、今後も研究が続けられる重要な分類群と言えるでしょう。

もう一度検索