楊大眼

楊大眼（よう たいがん）

楊大眼（生年不詳 - 518年）は、中国北魏時代の武将です。孝文帝と宣武帝に仕え、南朝梁との戦いでその名を馳せました。氐族の仇池国王、楊難当の孫にあたります。

生涯

幼少の頃は、妾腹の子であったため親族から顧みられることはありませんでしたが、並外れた身体能力を持っていました。太和年間に北魏に出仕し、その身体能力を認められて軍主に任じられます。孝文帝の南征に従軍し、その武勇は「六軍に冠たる」と称えられました。

宣武帝の時代には、奚康生と共に寿春攻略に貢献し、安成県開国子に封ぜられます。その後も、樊秀安の反乱鎮圧や、南朝梁との戦いで活躍しました。特に、王茂が占拠した河南城の奪還戦では、武衛将軍として曹敬、邴虬らを率いて大勝し、南朝梁の将を多数討ち取るなどの武功を挙げました。しかし、張恵紹が占拠した宿預攻略戦後、中山王元英と共に鍾離を包囲した際、部下の夜逃げを止められず敗北し、一兵卒に降格されています。

永平年間には中山内史に復帰し、南朝梁からの侵攻に備え、淮水・淝水の防備に当たりました。宣武帝の死後、孝明帝により光禄大夫に任じられ、荊山を守備します。その後、大乗の乱鎮圧にも参加しましたが、成果を上げられず兵を返すことになります。荊州刺史として赴任後、2年で亡くなりました。

人物像と逸話

楊大眼は、戦場では常に先頭に立って敵陣に突撃する勇敢な武将でした。その武勇は関羽や張飛に匹敵すると恐れられ、彼の名を聞けば泣く子も黙るほどだったと言われています。また、虎を退治したり、任地にいる間は盗賊が出没しなかったなど、数々の逸話が残っています。

文盲でしたが、記憶力は抜群で、一度聞いたことは決して忘れませんでした。命令は全て部下に口述筆記させていたと伝えられています。妻の潘氏は女傑として知られ、楊大眼と共に狩猟に出かけたり、戦場で活躍しました。楊大眼は同僚に潘氏を「潘将軍」と自慢していたと言います。しかし、潘氏は後に不貞を働き、楊大眼によって自害させられています。

楊大眼は兵士を大切にし、怪我をした兵士には涙を流して労い、子供たちと遊ぶなど、部下からの人望が厚かったとされています。しかし、「大乗の乱」以降は感情の起伏が激しくなり、兵士から恐れられるようになったとも伝えられています。

荊州刺史時代には、現地の少数民族を弾圧しました。また、北淯郡に出没した虎を退治し、その首を晒したと言われています。

王秉から瞳の中に車輪状の瞳があると指摘された際、「戦場に行くと英気が湧き上がり瞳に車輪が浮かび上がるのだ」と答えたという逸話から、重瞳であった可能性が指摘されています。

龍門石窟

楊大眼は、龍門石窟に釈迦像を造営しました。その際に添えられた「楊大眼造像記」は、書道史上、楷書の名品として知られています。

伝記資料

『魏書』巻73 列伝第61 「楊大眼伝」
『北史』巻37 列伝第25 「楊大眼伝」

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