楊奉

楊奉（よう ほう）

楊奉は、後漢末期に活躍した武将です。彼の生涯は、動乱の時代を象徴するように、波乱に満ちていました。元々は黄巾党の一派である白波賊の頭目として名を馳せましたが、後に官軍に仕え、李傕の配下となりました。しかし、李傕の政治姿勢に不満を抱き、同僚の宋果と暗殺を企てるも失敗。これを機に独立し、独自の勢力を築くこととなります。

献帝擁立と転落

楊奉の人生における転換点となったのは、献帝を擁立したことです。部下であった徐晃の進言に従い、献帝を李傕の支配から救い出し、洛陽へと落ち延びることに成功します。この功績から車騎将軍に任命されますが、その後の彼は、董承や韓暹、張楊らとの権力争いに巻き込まれていきます。

この混乱の中、曹操の策略によって、楊奉は献帝を曹操の勢力下である許へと連れ去られてしまいます。この出来事は、楊奉の立場を大きく揺るがし、彼は困窮のあまり韓暹と共に略奪行為に手を染めることとなります。さらに、曹操の奇襲によって兵を失い、徐晃が曹操に降伏したことで、楊奉は袁術の下へと身を寄せることになります。

袁術軍での戦いと裏切り

袁術軍の武将となった楊奉は、呂布との戦いで活躍します。しかし、建安2年（197年）に袁術が帝位を僭称したことをきっかけに、楊奉は韓暹と共に陳珪の説得に応じて呂布に寝返り、袁術軍を大敗させる要因を作ります。この裏切りは、彼の人物像を複雑なものとしています。

謎に包まれた最期

楊奉の最期については、史書の記述が大きく食い違っており、その実態は不明な点が多いのが現状です。

『三国志』魏書董卓伝によると、曹操が献帝を迎えた後に揚州・徐州の間で略奪を繰り返したため、劉備に殺されたとされています。
一方、『三国志』蜀書先主伝では、呂布に徐州を奪われた後に海西に駐屯した劉備が、揚州・徐州で略奪を行っていた楊奉を攻撃し、斬ったと記録されています。

これらの記述は、建安元年（196年）の出来事とされており、前述の袁術との戦いに参加したという建安2年の記録と矛盾しています。

さらに、董卓伝に付された『英雄記』によると、劉備に会見した際に斬られたとあるのみで、その時期は不明です。この記述が建安2年以降の出来事であるとすると、呂布に従った楊奉が、なぜ小沛に逃れていた劉備と面会したのかという謎が残ります。

これらの食い違う記述は、楊奉という人物が、当時の混乱した情勢の中で、いかに翻弄されたかを物語っているとも言えるでしょう。彼の生涯は、後漢末期の群雄割拠の時代を象徴する、複雑で謎に満ちたものとして後世に伝えられています。

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