張楊

張楊（ちょう よう）

張楊（ちょう よう、生年不詳 - 198年）は、後漢時代末期の武将、政治家。字は稚叔（ちしゅく）。并州雲中郡（現在の内モンゴル自治区フフホト市）の人。

生涯

挙兵と自立

霊帝の時代、武勇によって名を知られるようになり、武猛従事として并州刺史の丁原（ていげん）に属した。霊帝が西園軍を整備すると、張楊は丁原の命令で并州の軍勢を率いて上京し、蹇碩（けんせき）に仮司馬に任命された。

霊帝の崩御後、張楊は何進（かしん）に属し、故郷の并州に戻って募兵を命じられた。1000人余りの兵を集め、上党郡に留まって山賊を討伐した。何進が董卓（とうたく）に殺害されると、張楊は壷関にいた上党太守を攻撃したが、落とすことができず、近隣の県を侵略して軍勢を数千に膨れ上がらせた。

山東の諸侯が反董卓の義兵を挙げると、張楊は河内に駐屯した袁紹（えんしょう）の軍勢と合流し、匈奴の単于である於夫羅（うふら）と共に漳水に駐屯した。

初平2年（191年）、韓馥（かんふく）が袁紹に冀州を譲った背景には、張楊の合流によって袁紹の軍勢が強大になったことがあった。

後に於夫羅が反乱を起こすと、袁紹と張楊はそれに同調せず、於夫羅は張楊を捕らえ連行した。袁紹が麴義（きくぎ）を派遣して攻撃すると於夫羅は敗れたが、張楊を捕えたまま黎陽にいる度遼将軍の耿祉（こうし）を破って再起した。

その後、張楊は董卓から建義将軍・河内太守に任命され、河内郡野王県に駐屯した。

呂布（りょふ）が董卓を暗殺後に長安を脱出すると、袁術（えんじゅつ）や袁紹の元を転々とした後、張楊の元に身を寄せた。張楊は同郷の誼（呂布は五原郡出身）で呂布を受け入れたため、袁紹も呂布を恐れて攻撃できなかった。

同じく袁紹の元から流れてきた董昭（とうしょう）を幕下に加え、曹操（そうそう）が献帝と誼を通じるため使者を派遣した際には、董昭の進言を受け入れ、これを援助したため、曹操と親密になった。

張楊は慈愛深く温和な性格で、刑罰による威嚇を好まず、使用人の謀反が発覚した際にも涙を流して不問にしたという。

献帝・呂布支援と最期

興平2年（195年）、献帝が李傕（りかく）の元から関東に戻るため東上すると、張楊は献帝が仮の都としていた安邑に参上し、安国将軍・晋陽侯に封じられた。張楊は献帝を連れて洛陽に赴くことを望んだが、他の諸将が従わなかったため、任地の野王県に引き返した。

建安元年（196年）、楊奉（ようほう）・董承（とうしょう）・韓暹（かんせん）と共に洛陽への帰還を果たした献帝が困窮していると、張楊は再び洛陽に至り、米や衣服を献上した。その後、外敵に備えるため野王県に戻ろうとした際、大司馬に任命された。

建安3年（198年）、呂布が曹操と徐州で戦っていた際、張楊は呂布を勇気づけようとした。

同年11月、家臣の楊醜（ようしゅう）に裏切られ殺害された。楊醜は張楊の首級を曹操への手土産にしようとしたが、同僚の眭固（すいこ）によって殺された。

建安4年（199年）、袁紹の支援を受けようとした眭固が曹操軍に滅ぼされると、張楊軍の残軍を率いていた繆尚（びゅうしょう）・薛洪（せつこう）は董昭の働きによって曹操に降伏した。

三国志演義

小説『三国志演義』では、上党太守・第15鎮の反董卓同盟諸侯として登場する。史実では、張楊は上党太守に就任したことはなく、逆にこの地位にあった董卓陣営の人物を攻撃している。『演義』では呂布とも戦い、部将の穆順（ぼくじゅん、架空の人物）を討ち取られている。献帝が洛陽へ向かった後の事績は、史実同様に描かれており、最期も同様である。

関連人物

薛洪
眭固
董昭
楊醜
繆尚
穆順（『三国志演義』のみ）

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