楷書体

楷書体とは

楷書体は、漢字の書体の一つであり、大きく分けて「手書き書体」と「印刷書体」の2種類が存在します。手書き書体は「楷書」と呼ばれ、一画一画を続けずに筆を離して書くのが特徴です。一方、印刷書体は「楷書体」と呼ばれ、活字印刷で用いられます。

楷書（手書き書体）

概要

楷書は、一画ごとに筆を離して書くため、字形は方形に近いものが多く見られます。横線は、筆の打ち込み、中間の線、筆の止めがはっきりしていることが多く、これを「三過折」と呼ぶことがあります。現代では、漢字の最も基本的な字形とされています。楷書は比較的新しい時代に生まれた書体です。

現代日本では、書道などで楷書を学ぶ機会が減少し、活字印刷を通して漢字を目にする機会が増えています。そのため、楷書を活字体（明朝体）の字体（字の骨格）をなぞったものと考える人もいますが、活字体は康熙字典の書体を基にしており、伝統的な楷書とは異なります。

歴史

楷書は、漢代の標準的な書体であった隷書に代わり、南北朝から隋・唐にかけて標準となった書体です。行書体が確立した時代に発生したため、これらの書体の中では最後に生まれたとされています。唐時代までは「楷書」とは呼ばれておらず、「隷書」「真書」「正書」と呼ばれていました。「楷書」という用語が普及したのは、宋時代以降です。

現時点で最古の楷書は、1984年に発掘された呉の朱然墓から発見された名刺です。しかし、それ以後も、隷書と楷書の両方の特徴を持つ中間的な書体（今隷）が並行して用いられていました。北涼時代の写経に多く見られることから、北涼体と呼ばれることもあります。また、中国では楷隷、晋楷とも呼ばれます。

当時の楷書は字形が標準化されておらず、異なった字形の文字が多く存在していました。これらの異体字は六朝別字と呼ばれ、専門の字典として碑別字が存在します。

楷書の書体が洗練されたのは、初唐の太宗の時代です。多くの能筆家が輩出し、彼らの作品は石碑の拓本として現代に伝えられています。特に有名な人物として、初唐の四大家と呼ばれる欧陽詢・虞世南・褚遂良・薛稷がいます。中でも欧陽詢の「九成宮醴泉銘」は、「楷法の極則」を伝えるものとして名高いです。太宗の時代に楷書が洗練された背景には、律令制に基づく文書行政および科挙の導入があり、すべての官人が用いることができる字体の確立が求められたという事情があります。

また、楷書の四大家の一人である顔真卿は、小篆を基に楷書の字形を標準化しようとしました。彼の特徴的な字形は顔体と呼ばれ、その書法は顔法と呼ばれます。科挙の盛行に伴い、楷書の標準化がより必要となり、干禄字書、開成石経などが制作されました。

楷書体（印刷書体）

概要

現在、印刷書体として使われている楷書体は、清朝初期の木版印刷に使われた軟体楷書体・清朝体などと呼ばれる書体を基にしています。これらの書体は明朝体の影響を受けつつ、康熙帝が好んだ明末の董其昌、乾隆帝が好んだ元の趙子昂の書風の影響を受けています。軟体楷書は、日本の教科書体、弘道軒清朝体、正楷書体、台湾の標準楷書体（標楷体）などに見られます。

歴史

木版印刷は唐時代に遡りますが、楷書体が洗練されたのは宋時代です。大部分の木版印刷は整版（普通2ページを1枚の木板の片面に彫刻する）で制作されました。宋代に印刷された本に使用された楷書体のうち、特に普及した書体を、明時代後半以降に模倣した印刷書体が宋朝体です。

明代後半には、書物の商業的印刷刊行が盛んになり、分業で能率的に彫刻でき、読みやすい字体として、明朝体が発明されました。中国・日本の書物の活字印刷は、19世紀中期までは少部数書籍に限定されており、李氏朝鮮以外では一般的ではなかったため、活字の書体は整版の書体と同じでした。

脚注

関連項目

書体
カイノキ
劉炳森
イワタ - 小学校教科書用として1966年、楷書体をベースとした活字書体「教科書体」を初めて開発し普及させたフォントベンダー

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