横山作次郎

横山作次郎：講道館柔道の礎を築いた鬼才

横山作次郎（1864年 - 1912年）は、講道館創成期を支えた伝説的な柔道家です。その強靭な体格と猛烈な稽古から「鬼横山」と称され、富田常次郎、西郷四郎、山下義韶と共に講道館四天王の一人として名を連ねました。

生涯

江戸の鷺宮で生まれた横山は、幼少の頃より武術に親しみ、天神真楊流や起倒流といった古流柔術を修めました。兄弟子には後に山形県警の師範となった三上富治がいます。1886年、23歳で嘉納治五郎の講道館に入門し、その才能を開花させます。入門からわずか数ヶ月で初段、二段と昇段し、その実力を示しました。

警視庁武術大会では、良移心当流の中村半助と引き分けるなど、早くからその名を知られるようになります。その後も、警視庁柔術世話掛を務めながら、竹内流の金谷仙十郎と互角に渡り合うなど、数々の試合でその強さを証明しました。

1896年からは東京高等師範学校で柔道を教授し、後進の育成にも尽力しました。1904年には七段に昇段し、1908年には『柔道教範』を出版するなど、柔道の普及と発展に大きく貢献しました。

1912年9月23日、49歳という若さでこの世を去りました。墓は東京都北区田端の大龍寺にあります。

技

横山の得意技は、回込み払腰、俵返、横捨身などでした。特に知られているのは、彼が編み出したとされる「天狗投」という技です。しかし、この技に関する文献はほとんど残っておらず、その正体は謎に包まれています。一説には、天神真楊流の「天狗勝」がそのルーツであるとも言われています。

門下

横山は、多くの優れた柔道家を育成しました。中でも、三船久蔵や前田光世は、後の柔道界に大きな足跡を残しました。三船は「不敗のRecord」を持つ柔道家として知られ、前田は「コンデ・コマ」として世界中に柔道を広めました。

人物像

「鬼横山」の異名が示すように、横山は稽古熱心で、試合では常に激しい気迫を漲らせていたと言われています。しかし、その一方で、温厚で人情味あふれる人物でもあり、多くの門下生から慕われていました。嘉納治五郎も、横山のことを高く評価し、その功績を称えています。

後世への影響

横山作次郎は、講道館柔道の創成期を支え、その発展に大きく貢献しました。彼の強靭な精神と卓越した技術は、多くの柔道家に影響を与え、現在にまで受け継がれています。また、彼をモデルとした小説や映画、ドラマなどが制作され、その名は広く一般にも知られています。

小説
姿三四郎 - 富田常雄の小説。横山をモデルにした壇義麿が登場する。

映画
柔道一代 - 横山をモデルにした横川次郎作が登場する（演：曽根晴美）。

テレビドラマ
* 柔道一代 (テレビドラマ) （1962年 - 1964年、TBS） - 横山をモデルにした横川耕次郎が登場する（演：友田輝）。

横山作次郎は、まさに講道館柔道の礎を築いた一人であり、その功績は永遠に語り継がれることでしょう。

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