樫 (松型駆逐艦)

駆逐艦『樫』：激動の艦生と数々の作戦

1944年9月30日、日本海軍の駆逐艦『樫』が竣工しました。同艦は藤永田造船所で建造され、艦名は同名の桃型駆逐艦を受け継いだ2代目です。松型駆逐艦の10番艦として誕生した『樫』は、太平洋戦争末期の激動の時代を駆け抜けることになります。

建造から訓練、そして戦場へ

『樫』は一等駆逐艦（丁型）仮称艦名5490号艦として建造されました。起工は1944年5月5日、6月20日に艦名が「樫」と命名され、同日に「榧」「檜」「楓」と共に松型駆逐艦に類別されました。黒木俊思郎少佐が艤装員長に任命され、8月13日に進水。竣工後、佐世保鎮守府籍となり、黒木少佐が初代艦長に就任しました。

就役後は第十一水雷戦隊に編入され、瀬戸内海で訓練に励みました。10月には台湾沖航空戦が発生し、日本海軍は警戒態勢を強化。この際に、航空隊要員の輸送任務などに従事しました。しかし、台湾沖航空戦における主力部隊への編入は見送られました。

ヒ81船団護衛とレイテ沖海戦

11月7日、『樫』はヒ81船団に編入されました。この船団はレイテ島へ第23師団を輸送する重要な任務を担っており、空母『神鷹』や複数の海防艦、陸軍特種船、タンカーなどで構成されていました。11月14日、伊万里湾を出港したヒ81船団は、航海の途中でアメリカ潜水艦の雷撃を受け、陸軍特種船『あきつ丸』と『摩耶山丸』、そして空母『神鷹』が相次いで沈没するという大きな損害を受けました。しかし、『樫』は損害を受けることなく、12月4日にシンガポールに到着しました。

ヒ81船団護衛中に、11月15日付で『樫』は「桑」「杉」「樅」「檜」と共に第52駆逐隊を編成され、岩上次一大佐が司令に任命されました。その後、第52駆逐隊は第五艦隊隷下の第三十一戦隊に編入されました。

南西方面作戦と礼号作戦

12月5日、北東方面艦隊が解隊され、第五艦隊は南西方面艦隊に編入されました。シンガポール到着後、『樫』はマニラへの緊急輸送任務に就きましたが、12月14日、アメリカ軍がミンドロ島に上陸を開始し、ミンドロ島の戦いが勃発しました。

日本海軍はミンドロ島への攻撃作戦を計画。12月16日、『樫』は他の松型駆逐艦2隻と共にミンドロ島への攻撃を命じられましたが、艦船の不具合等により、作戦は延期。その後、12月24日、礼号作戦としてサンホセへの攻撃作戦に参加。空襲を受けながらもサンホセに接近し、敵貨物船に魚雷攻撃を行い、大きな損害を与えることに成功しました。

高雄空襲と終戦

1945年1月、台湾高雄へ移動した『樫』は、1月21日、アメリカ軍機の空襲を受け、3発の直撃弾により大きな損傷を受けました。戦死21名、負傷者20名という被害を出した『樫』は基隆へ回航され、応急修理が行われました。その後、門司まで船団護衛の任務に従事し、2月8日に佐世保に帰投。佐世保海軍工廠で修理を受けました。

終戦後、『樫』は復員輸送に従事した後、賠償艦としてアメリカに引き渡され、1948年3月20日に解体されました。

参考文献

本文中には、多数の参考文献からの情報が使用されています。これらの参考文献には、艦艇史、戦史、関係者の証言などが含まれており、詳細な艦歴の解明に役立っています。これら参考文献の情報に基づき、正確な記述を心がけました。

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