樹皮布

樹皮布について

樹皮布（じゅひふ）は、樹皮の内側から得られる靱皮繊維を用いて作られる布であり、世界中の多くの地域でそれぞれの材料を使った独自の製作法が存在します。この布は、アジアやアフリカ、アメリカなど、様々な場所で製造されているため、各地域の文化や歴史を反映した特徴があります。

樹皮布は、一般的には「バーククロス」とも呼ばれ、樹皮のような手触りを持つ密に織られた布にも同様の名称が使われています。しかし、樹皮布と樹皮紙は製法が似ているため、混同されることが多い点には注意が必要です。これらの布は、地域に根差した技術と思いを感じさせる文化的な役割を持っています。

地域ごとの樹皮布の例

• - アイヌ民族

アアイヌ民族は、オヒョウやシナノキから樹皮布を作り、「アットゥシ」と呼ばれる伝統的な衣服に使用します。このアットゥシは、アイヌの文化において重要な存在であり、独特の模様が施されています。

• - アメリカ先住民

アメリカ先住民の間には、ヒノキ科のベイスギから作られる杉樹皮織物があります。これらの織物は、日常生活や儀式において使用され、先住民の重要な文化的な遺産の一部となっています。

• - ウガンダ

ウガンダでは、Ficus natalensis（ムトゥバ）という木の樹皮から樹皮布が作られ、現地では「ルブゴ（Lubugo）」と呼ばれています。この技術は2008年にユネスコの無形文化遺産に登録されており、地域の人々にとって大切な文化的象徴となっています。

• - オーストロネシア人

オーストロネシアの地域では、カジノキやパンノキから作られた樹皮布は「タパ」と称されていますが、地域ごとに「カパ（ハワイ語）」、「ンガトゥ（トンガ語）」、「マシ（フィジー語）」、「シアポ（サモア語）」など異なる名称があります。これらの布は、衣服や装飾品として幅広く使用されています。

• - 中国・ベトナム

中国の海南島の黎族や広西チワン族、広東省では、樹皮布が古代から作られています。また、隣接するベトナムでもこの技術が根付いており、現代でも農村部で生産が続けられています。これは伝統的な生活様式を維持する上での重要な要素です。

• - ロシア、北欧

ロシアや北欧では、シナノキや白樺の樹皮から作られた靴「ラポット（лапоть）」が存在します。これらの靴は新石器時代から作られており、布というより編み物に近い形状です。特に、12世紀のノルウェー内戦では、敵勢力が樺皮靴を履いていたことから、彼らを嘲笑うために「ビルケベイネル」と名乗るようになりました。

樹皮布は、単なる素材としての役割を超え、各地域における文化、歴史、伝統を物語る重要な存在です。国や民族によってそのスタイルや用途が異なり、深い意味を持つ工芸品としての価値を持っています。

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