欠け眼生き

欠け眼生き（かけめいき）

囲碁における「欠け眼生き」とは、一見するとアタリの状態に見える「欠け眼」が、周囲の石と連結することで、結果的に生きる形となる特殊な状況を指します。これは、囲碁の死活問題における重要な概念の一つであり、複雑な局面でしばしば現れます。

欠け眼とは

囲碁では、石が囲まれて最終的に取り除かれる状態を「アタリ」と言います。アタリになる可能性のある眼を「欠け眼」と呼びます。通常、石を活かすには、アタリにならない眼を二つ作る必要があります。しかし、欠け眼生きのケースでは、一見すると欠け眼に見える二つの眼が、特殊な配置によってアタリにならず、結果として石が生きるのです。

欠け眼生きのメカニズム

欠け眼生きは、主に、敵の石を包囲する石がさらに周囲を包囲されるという、非常に特殊な状況で発生します。具体的には、ある石のグループが、相手の石を囲んでいると同時に、その石のグループ自身も、さらに別の石によって囲まれている状態です。この状態において、そのグループが持つ2つの眼が、周囲の石と連結しているために、相手はアタリにすることができません。この連結によって、2つの欠け眼が機能し、石が生きるというのが欠け眼生きのメカニズムです。

実戦での出現

欠け眼生きは、その特殊な形成条件から、実戦で現れることは非常に稀です。しかし、プロの対局や高度な詰碁の問題では、この形が見られることがあります。特に、敵の石を包囲した石がさらに包囲されるという複雑な局面で発生しやすく、高い囲碁の技術と理解が求められます。

実戦例

21世紀以降、確認されている欠け眼生きの例として、以下のものがあります。

2016年8月20日: 韓国囲碁リーグで、崔哲瀚（黒）が金志錫（白）の石を欠け眼生きで仕留めました。
2019年9月23日: 竜星戦トーナメント決勝で、上野愛咲美（黒）が一力遼（白）の石を欠け眼生きにしました。

これらの例は、欠け眼生きが高度な技術を要する、稀な現象であることを示しています。

関連概念

欠け眼生きを理解するためには、以下の囲碁用語の理解も役立ちます。

詰碁: 死活問題を解く訓練。
隅のマガリ四目: 隅で発生する特殊な形の死活。
セキ: 双方の石がアタリにならず、共存する状態。
長生: 特定の条件下で、石が死なない状態。

参考文献

趙治勲『基本死活辞典』全2巻　日本棋院　1984-85年
関山利一、利夫『傑作詰碁辞典』誠文堂　新光社　1975年(改訂版 2010年)

欠け眼生きは、囲碁の奥深さを示す現象の一つであり、その理解は囲碁の技術向上に不可欠です。

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