欧州連合(EU)は、複数の
条約によってその法的根拠を支えられています。これらの
条約を総称して「
欧州連合基本
条約」と呼びます。EUの機関や組織は、これらの
条約に基づいて設立されており、EUの国際的な行動や活動の目的、そしてEUが行使できる権限の範囲も、基本
条約によって明確に定められています。つまり、EUは基本
条約で定められた範囲内でのみ権限を行使することができるのです。
基本
条約の中核をなすのは、1993年に発効した「
欧州連合条約」(
マーストリヒト条約)と、1958年に発効した「
欧州連合の機能に関する
条約」(
ローマ条約、旧名称:
欧州経済共同体設立
条約)の2つです。これらの2つの主要
条約に加え、付属する
議定書や宣言も基本
条約の一部を構成しています。
これらの基本
条約は、発効後少なくとも10年に一度は修正が行われており、最新の修正は2009年に発効した「
リスボン条約」によるものです。
リスボン条約は、
欧州連合条約および
欧州共同体設立
条約を修正する
条約として、EUの制度や運営に大きな変化をもたらしました。
欧州連合条約は、前文と6つの編で構成され、EUの根本理念、目的、機関、そして対外行動などを規定しています。
第1編 総則では、EUの設立、EUの法的根拠、EUの
価値観(人間の尊厳、
自由、
民主主義、
平等など)が示されています。また、EUの目的として
平和の維持、
価値観の発展、市民の
幸福の追求などが挙げられています。さらに、加盟国の
主権とEUの権限の範囲(授権原理、
補完性原理、比例性原理)についても規定されています。
第2編 民主主義についての規定では、EU市民の権利、EUの
民主主義的運営、市民参加の重要性などが述べられています。
欧州議会、理事会、
欧州理事会の役割、市民による請願制度などが規定されています。
第3編 機関についての規定では、EUの主要機関(
欧州議会、
欧州理事会、理事会、
欧州委員会、
欧州連合司法裁判所、
欧州中央銀行、会計監査院)の構成、権限、相互関係などが詳細に規定されています。
第4編 強化された協力についての規定では、特定の分野において、一部の加盟国間でより緊密な協力を進めることを可能にする規定が設けられています。
第5編 連合の対外行動についての一般規定と共通外交・安全保障政策に関する細則では、EUの外交政策の基本原則、共通外交安全保障政策(CFSP)の枠組み、EUの対外活動に関する規定などが示されています。
第6編 最終規定では、
条約の修正、加盟・脱退の手続き、
条約の適用範囲など、
条約に関する最終的な規定が定められています。
欧州連合の機能に関する条約:EUの政策と活動
欧州連合の機能に関する
条約は、EUの役割、政策、活動の詳細を規定しており、7部で構成されています。
第1部 原則では、EUの権限、社会的理念、文書の公開などが規定されています。
第2部 無差別と連合の市民では、
差別禁止、EU市民権、居住移動の
自由などが規定されています。
第3部 連合の政策と域内活動では、域内市場、農業、運輸、経済・
金融政策、雇用政策、環境政策など、EUの幅広い政策分野に関する詳細な規定が設けられています。
第4部 海外領土の連携では、EUの
海外領土との連携に関する規定が定められています。
第5部 連合による対外活動では、EUの外交政策、対外貿易政策、開発協力、人道支援などに関する規定が定められています。
第6部 機関と財務に関する規定では、EU機関の運営、EU予算、立法手続などに関する規定が定められています。
*
第7部 一般・最終規定では、
条約の適用範囲、機関の所在地、法的問題などに関する規定が定められています。
議定書、附属文書、宣言
基本
条約には、
議定書、附属文書、宣言が附属しており、
条約本文を補足する詳細な規定や特定加盟国への特別な規定が含まれています。これらの文書は、
条約本文ほど強い法的拘束力はありませんが、EUの制度や運営を理解する上で重要な役割を果たしています。
条約の修正と批准
基本
条約の修正には、通常の改定手続きと簡易化された改定手続きの2種類があります。いずれの手続きにおいても、加盟国議会による承認が必要であり、
国民投票が行われる場合もあります。歴史上、
国民投票で
条約が否決された例もあり、EUの制度形成は常に国民の意思と複雑に絡み合っています。
批准された条約と批准されなかった条約
これまでに数多くの
条約が批准され、EUの枠組みは発展を遂げてきました。しかし、
欧州防衛共同体設立
条約や欧州
憲法条約など、批准されなかった
条約も存在し、EUの歩みには常に困難や課題が伴ってきたことを示しています。
欧州連合基本
条約は、EUの制度と運営の根幹をなす重要な文書群であり、EUの過去、現在、そして未来を理解する上で不可欠なものです。