武田信勝

武田信勝について

武田信勝（たけだ のぶかつ）は、安土桃山時代の武将で、甲斐武田家第18代当主です。戦国大名としての甲斐武田家の最後の当主とされています。

生涯

1567年、武田勝頼の長男として伊那高遠城で生まれました。父の勝頼は、武田信玄の庶子として生まれ、信濃諏訪氏を母としていました。武田家は信玄の時代に信濃侵攻を行い、勝頼は諏訪庶流の高遠諏訪家を継いで高遠城主となっていました。

武田氏は、北信地域を巡って越後の上杉謙信と争っていましたが、1561年の第四次川中島の戦いを機に北信の争いは収束しました。その後、尾張の織田信長と友好関係を築くなど、外交方針を転換しました。1565年には、信玄の嫡男である武田義信が謀反により廃嫡され、勝頼が武田家の世子となりました。

信勝の母である龍勝院は、美濃の国衆である苗木遠山氏の出身で、当時、遠山氏は織田氏と武田氏の両方に属していました。龍勝院は信長の養女として1565年に武田家に嫁ぎましたが、信勝を出産した際に亡くなったとされています。ただし、龍勝院の入嫁と信勝の出生については、『甲陽軍鑑』にのみ記録されており、確実な資料では確認されていません。信勝誕生の際には、武藤喜兵衛（後の真田昌幸）、山県昌景、土屋昌続らが使者として派遣され、信玄によって信勝と命名されたと伝えられています。

1571年、勝頼と信勝は甲府の躑躅ヶ崎館に移りました。1573年に信玄が亡くなると、信玄は遺言として自身の死を3年間秘匿し、信勝が成人するまで勝頼が後見役を務めることを命じました。

勝頼の時代には、1575年の長篠の戦いで武田氏が敗退しました。また、御館の乱後の甲越同盟締結や甲相同盟の破綻などを経て、外交方針の再構築が行われました。その中で、織田氏との和睦が試みられました。

1579年には、勝頼が信勝の元服準備を命じ、温井常陸介が傳役として付けられました。

1582年、織田信長と徳川家康による甲斐侵攻が始まると、織田・徳川勢の猛攻と有力家臣の離反によって武田領国は崩壊しました。勝頼は新府城を放棄して小山田信茂を頼りましたが、信茂の裏切りにより、天目山の麓で織田家臣の滝川一益に捕らえられ、信勝は勝頼や家臣たちとともに自害しました。享年16歳でした。

信勝の首は、信長の命によって京の一条大路の辻で父の勝頼らとともに梟首されました。信勝の死によって、新羅三郎義光から続く名門甲斐武田氏の嫡流は滅亡しました。

信勝没後の名跡

武田家の名跡は、信勝の従兄弟にあたる穴山勝千代（武田信治）が継ぎました。しかし、勝千代は早世し、その後は徳川家康の五男である武田信吉が名跡を継ぎましたが、これも夭折したため断絶しました。このため、武田の嫡流は、武田信道（信玄の次男の子で信勝の従兄弟）の系統である伊豆武田家とみなされ、紆余曲折の末、この家系は高家として存続しました。

関連作品

信勝を題材とした作品は、映画、ドラマ、漫画、ゲームなど多岐にわたります。

映画
『影武者』（1980年）：武田竹丸として登場
『信虎』（2021年）：武田信勝（武王）として登場
ドラマ
『武田信玄』（1988年）：黒田勇樹が演じました。
漫画
『レイリ』：主人公は信勝の影武者となる少女。信勝は、父の勝頼がコンプレックスを抱くほど軍才に長けた天才少年として描かれています。
ゲーム
* 『婆裟羅2』（2001年）：信勝が主人公のアーケードシューティングゲームです。オーバーテクノロジーの戦国時代を舞台としています。

脚注

1. 丸島和洋「武田勝頼と信勝」（『戦国遺文武田氏編』5、月報、2004年）
2. 丸島和洋「武田勝頼と一門」（柴辻俊六・平山優編『武田勝頼のすべて』新人物往来社、2007年）
3. 柴辻俊六『武田勝頼』新人物往来社、2003年。

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