源清光

源清光（みなもと の きよみつ）

源清光は、平安時代末期に活躍した武将で、甲斐源氏の三代目当主です。通称として黒源太、逸見清光、武田清光などの名で知られています。父は武田冠者・源義清で、逸見光長、武田信義、加賀美遠光、安田義定、浅利義遠など、多くの子に恵まれました。

生涯

清光は、父・義清が本拠としていた常陸国那珂郡武田郷（現在の茨城県ひたちなか市武田）で生まれました。15歳で元服し、大治5年（1130年）には、一族の佐竹氏との争いが原因で、父とともに常陸国を追放され、甲斐国八代郡市河荘（現在の山梨県西八代郡市川三郷町）に移り住むことになりました。

甲斐国に移った後、父・義清とともに市河荘内の平塩岡に館を構え、義清は市河荘司となりました。その後、清光は甲斐国北西部の逸見荘へと進出し、逸見冠者を称するようになりました。この地で勢力を拡大し、八ヶ岳南麓の逸見荘に館を構え、詰城として谷戸城を築城したと伝えられています。

清光は、保元の乱や平治の乱といった中央での争乱には参加せず、甲斐国での勢力拡大に専念しました。59歳で亡くなり、山梨県北杜市長坂町大八田にある清光寺に墓所があります。

清光の子孫たちは、甲府盆地の各地に進出し、それぞれの地域名を姓として、逸見氏、武田氏、加賀美氏、安田氏、浅利氏といった甲斐源氏の諸支族の祖となりました。特に武田氏は、後に甲斐源氏の中心的な氏族として発展しました。

武田姓に関しては、父・義清が既に常陸国で名乗っていたという説もありますが、清光自身は逸見姓を名乗り、武田姓を称した形跡はありません。一般的には、清光の子・信義が武田八幡宮で元服した際に武田姓を称したとされています。

逸見氏は、信義の武田氏が台頭するにつれて衰退したと考えられていますが、その後、支族の動向は確認できるものの、直系の子孫に関しては不明な点が多いです。

源義清・清光父子の甲斐入国

源清光が父・義清と共に甲斐国に移った経緯については、複数の説があります。

『尊卑分脈』や「武田系図」には、義清・清光父子は甲斐国市河荘に配流されたと記されています。しかし、『甲斐国志』では、義清が官を授かり市川郷に入部したことを誤って配流と記したものであり、流罪ではなかったと説明されています。

一方、志田諄一は、清光の「黒源太」という異名に着目し、清光と常陸平氏との勢力争いの中で、朝廷に訴えられた結果、父子が流罪に処せられたと主張しています。この説は、現在では広く受け入れられていますが、異論も存在します。

五味文彦は、当時の規定では甲斐国は流罪の配流先には指定されておらず、また当時の甲斐国の知行国主である藤原長実が義清の関係者であったことから、流罪ではなく、対立した当事者達との隔離のための移郷処分であったと主張しています。また、高橋修は、常陸大掾職の世襲を否定する立場から、この事件における常陸平氏の関与を疑問視しています。

系譜

祖父：源義光
父：源義清
母：源兼宗娘
妻：不詳
長男：逸見光長（1128-?）
次男：武田信義（1128-1186?）
男子：加賀美遠光 - 弟とも
男子：安田義定 - 弟とも
男子：二宮清隆
男子：河内義長
男子：田井光義（1124?-1213）
男子：曾禰厳尊 - 別名：玄尊
男子：奈胡義行 - 姓は奈古とも
男子：浅利義遠（1149-1221） - 別名：義成
男子：八代信清
男子：利見義氏
男子：河内長義
男子：源道光
男子：源光賢

参考文献

柴辻俊六『甲斐武田一族』新人物往来社、2005年。
西川広平 編『甲斐源氏一族』戒光祥出版〈シリーズ・中世関東武士の研究 第二二巻〉、2021年。ISBN 978-4-86403-398-5。
志田諄一「武田義清・清光をめぐって」。/初出:『武田氏研究』第9号、1992年。

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