死と変容

リヒャルト・シュトラウスの交響詩『死と変容』

『死と変容』（Tod und Verklärung）作品24は、リヒャルト・シュトラウスが作曲した3作目の交響詩であり、彼の初期の代表作の一つです。この作品は、死と変容という深遠なテーマを、劇的な音楽で表現しています。

作曲の背景

シュトラウスが作曲家、指揮者として注目され始めた1888年、ミュンヘンで作曲を開始しました。完成は1889年11月18日、ヴァイマルにて。初演は翌1890年6月21日、アイゼナハ音楽祭でシュトラウス自身の指揮で行われました。若き日のシュトラウスは病弱で、度々死の淵をさまよった経験があり、この交響詩は当時の彼の心境を反映していると言われています。完成当初、作品には標題が付いていませんでしたが、後に旧知のアレクサンダー・リッターが詩を書き、それが総譜の冒頭に掲げられました。

詩の内容

詩は、死に瀕した病人の内面を描写しています。病室で横たわる病人の心臓の鼓動、幸福だった日々への回想、そして死の恐怖と生への執着が描かれます。生と死の激しい戦いの後、死による魂の変容が示唆され、最後は静かに終結します。

音楽の構成

曲は、ハ短調からハ長調へと変化するソナタ形式を基調としています。演奏時間は約24分。序奏は、弱音器をつけた弦楽器による静かで暗い雰囲気で始まります。ティンパニの弱奏は、病人の心臓の鼓動を表し、木管楽器の明るいメロディーは、病人の幸福だった日々を回想させます。その後、ティンパニの一撃を合図に、テンポがアレグロ・モルト・エ・アジタートに変わり、生と死の壮絶な戦いが始まります。死の恐怖が低弦で、病人の生きようとする強い意志が総奏で表現されます。


戦いが最高潮に達した後、一時的にテンポが緩やかになり、回想のテーマが再び現れます。その後、金管楽器による変容のテーマが現れ、死による魂の浄化が示唆されます。最後は、序奏のテーマが戻り、静かに曲が閉じられます。

初演と日本初演

初演は1890年6月21日、アイゼナハ市立劇場にて作曲者自身の指揮によって行われました。日本初演は1929年12月22日、日本青年館にて山本直忠指揮、新交響楽団によって行われました。

編成

フルート3、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、タムタム、ハープ2、弦五部という大規模な編成です。

『4つの最後の歌』との関連

シュトラウスは、死の前年の1948年に完成した『4つの最後の歌』の第4曲「夕映えの中で」の終盤で、本曲の一節を引用しています。この引用は、「これがもしかして死なのか？」という歌詞に合わせて行われており、シュトラウスの死生観を象徴していると言えるでしょう。

参考文献

カール・ベーム著、高辻知義訳『回想のロンド』（白水社、1970年5月13日）

外部リンク

死と変容 作品24の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
Strauss, Richard／DEATH AND TRANSFIGURATION (TOD UND VERKLARUNG), Op.24 - Score - ニューヨーク・フィルハーモニックWebサイトより《バーンスタイン刻銘入》
第936回定期演奏会 Cシリーズ - 東京都交響楽団
第672回定期演奏会 曲目解説 - 東京交響楽団

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