死の舞踏 (サン＝サーンス)

『死の舞踏』（Danse macabre）は、カミーユ・サン＝サーンスが作曲した管弦楽作品であり、彼の4つの交響詩の中でも特に有名な作品です。

作曲の経緯

この作品は、フランスの詩人アンリ・カザリスの幻想的な詩にインスパイアされ、1872年に歌曲として初めに作曲されました。その後、1874年に管弦楽曲として改訂されました。物語は、深夜0時に時計の音が鳴り響くと、墓場から骸骨たちが現れて踊り始めるという不気味な情景を描写しています。踊りは次第に激しさを増しますが、夜明けを告げる雄鶏の声が聞こえると、骸骨たちは墓へと逃げ帰り、再び静寂が訪れるというストーリーです。

初演

1875年1月24日、パリのシャトレ座でエドゥアール・コロンヌ指揮、コロンヌ管弦楽団によって初演されました。この作品は、ピアニストのカロリーヌ・モンティニー＝ルモーリ夫人に献呈されました。しかし、初演は一般には受け入れられず、特にシロフォンが骸骨の骨がぶつかる音を表現している点などが、作曲者の趣味が悪いと批判されました。しかし、その後、繰り返し演奏されるにつれて、現在では広く受け入れられるようになり、サン＝サーンスの代表作の一つとして知られるようになりました。

カザリスの詩

楽譜の冒頭には、カザリスの詩の一部が引用されています。この詩は、作品の雰囲気とテーマを強調する役割を果たしています。

楽器編成

標準的なオーケストラ編成で構成されています。特筆すべきは、独奏ヴァイオリンがスコルダトゥーラ（変則調弦）を使用している点です。通常、ヴァイオリンはG、D、A、Eと調弦しますが、この曲ではG、D、A、E♭と調弦します。これは、冒頭で死神がヴァイオリンを弾く場面で、属九の和音（D、A、E♭）を際立たせるためです。この変則調弦により、AとE♭の音を同時に開放弦で演奏することが容易になり、音の響きをより豊かにしています。さらに、D、A、E♭が全て開放弦であることで、音色の統一感も生み出しています。

曲の構成

曲はト短調、4分の3拍子で、穏やかなワルツのテンポで進行します。サン＝サーンスの他の交響詩と比較しても、この曲は描写的な要素が特に強いのが特徴です。曲中では、死神のヴァイオリンの動機、フルートの主題、そしてヴァイオリンによって演奏される「largamente」と指示された気だるい旋律の3つの要素が変奏を繰り返しながら展開されていきます。

編曲

この曲は、作曲者自身による2台ピアノ版やヴァイオリンとピアノ版の編曲も存在します。また、フランツ・リストによるピアノ独奏版（S. 555）は特に有名で、ヴラディーミル・ホロヴィッツによるリスト編曲の更なる編曲版も知られています。他にも、エドウィン・ルメアによるオルガン独奏版など、様々な編曲版が存在します。

曲中にシロフォンで表現される骸骨のぶつかり合う音は、後に作曲された組曲『動物の謝肉祭』の第12曲「化石」でも再利用されています。

関連事項

死の舞踏 (美術)
死の舞踏 (リスト) - フランツ・リスト作曲のピアノ独奏を伴う管弦楽曲

外部リンク

* 交響詩『死の舞踏』ト短調 作品40, R. 171の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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