死の舞踏 (リスト)

概要

フランツ・リストの『死の舞踏』（Totentanz）S.126は、ピアノ独奏を伴う管弦楽曲であり、原題を「死の舞踏－『怒りの日』によるパラフレーズ」（Totentanz - Paraphrase über "Dies irae"）といいます。この曲は、グレゴリオ聖歌の『怒りの日』の旋律を基にしたパラフレーズ（変奏曲）であり、リストの弟子であるハンス・フォン・ビューローに献呈されました。

リストは1838年のイタリア旅行中に、ピサのカンポサント墓所にある14世紀のフレスコ画『死の勝利』に深い感銘を受けました。この経験が、後の『死の舞踏』の着想につながったとされています。曲中で用いられている『怒りの日』は、ローマ・カトリック教会のセクエンツィアであり、最後の審判を想起させる旋律です。リストはこの旋律を基に、ピアノが華麗に活躍する変奏曲を作曲しました。ベルリオーズも『幻想交響曲』でこの旋律を使用していますが、リストがベルリオーズの影響を受けたかは不明です。

1849年に一旦完成した『死の舞踏』は、その後リストによって改訂が重ねられ、1865年にハンス・フォン・ビューローの演奏によって初演されました。ピアニストのアルフレート・ブレンデルは、この曲を「ロ短調ソナタに比肩する」と高く評価しています。

楽曲構成

曲は、ティンパニとピアノによるグロテスクな反復音に乗せて、管楽器と低音弦によって『怒りの日』の旋律が奏でられるところから始まります。短いカデンツァとピアノによる主題提示に続き、5つの変奏が展開され、コーダを兼ねる最後の変奏で劇的な終結を迎えます。演奏時間は約15分です。

楽器編成

独奏ピアノ
ピッコロ
フルート2
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン2
トランペット2
トロンボーン3
テューバ
ティンパニ
シンバル
トライアングル
タムタム
弦五部

編曲・異稿

リスト自身によるピアノ独奏版（S.525）と2台ピアノ版（S.652）が存在します。また、1919年にはフェルッチョ・ブゾーニの改訂版が出版され、この版では1853年稿が採用されています。ブゾーニ版では、曲の後半に詩篇130篇《深き淵より De Profundis》のフレーズが現れ、コーダでは『怒りの日』と『深き淵より』が対位法的に組み合わさり、終結します。

関連事項

死の舞踏 (美術)：中世ヨーロッパを中心に描かれた絵画のテーマ。
死の舞踏 (サン＝サーンス)：カミーユ・サン＝サーンス作曲の交響詩。リストによるピアノ独奏版もあります。
マクシム・ムルヴィツァ（マキシム）：クロアチア出身のピアニストで、独自の編曲による演奏がフィギュアスケートで使用されています。

外部リンク

死の舞踏 S.126の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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