死罪 (律令法)

死罪の歴史とその意義

死罪（しざい）とは、日本の古代から中世にかけて存在した極刑の一つで、受刑者の命を奪う最も重い刑罰です。この言葉は、律令法における五刑の一つとして位置づけられています。日本の大宝律令や養老律令には、単に「死」と記されており、別名として大辟罪（だいへきざい）や死刑（しけい）とも称され、現代の死刑という呼称もここに由来します。

古代の死罪

古代日本では、「ころすつみ」や「しぬるつみ」という言葉が存在し、これは当時の殺人罪とは異なり、罪が死をもってしか浄化されない行為を指していたと考えられています。中国の『隋書』や『日本書紀』には、殺人や強盗、強姦に対して死罪が適用されるケースが多く見られ、斬首刑や絞首刑、焚刑が行われていました。

律令体制下の死罪

律令体制においては、現在の刑法に相当する「律」が整備され、養老律令においては賊盗に対する五つの刑罰が定められました。その中で、死罪は最も厳しいものとされ、絞首刑と斬首刑が執行方法としてあります。斬首刑は特に重罪に適用され、絞首刑よりも即座に命を奪う方法と見なされていました。これは、中国の文化において、首が切り離されることが肉体の復活を防ぐと考えられていたからです。

死罪の執行は公衆の前で行われ、刑部省の官人や他の公的な立会人が見守る中、実施されました。立会人が量刑に疑問を抱くと、執行は一時中断され、天皇の許可を仰ぐ仕組みが整っていました。さらに、処刑後の怨念が人々に影響を及ぼすことを恐れ、処刑は特定の時期に限定されていました。

身分制度と死罪

当時、死罪は身分によって異なった適用がありました。皇族や高位の貴族は自宅での自尽を許可され、婦人や七位以上の貴族には公開処刑が行われなかった反面、主人が奴婢を殺害しても軽い処罰で済むなど、身分差別が存在しました。

死罪の変遷

772年に新たな規定が設けられ、放火や盗賊に対しては格殺（撲殺）が導入されました。その後、818年に窃盗や強盗に関する死罪の廃止が進みました。聖武天皇の治世においては、仏教の影響により死罪に対する認識が変わり始め、死刑を命じられた囚人が流罪にされることが増加しました。

810年の薬子の変では、藤原仲成が処刑されましたが、その後は必ず流罪に減刑されるという慣習が定着しました。これにより、平治の乱における藤原信頼らの処刑まで、中央の貴族社会においては死罪が事実上停止されました。

まとめ

死罪は古代から中世にかけて、社会の治安や秩序を守るための手段として位置づけられていましたが、時代とともにその意味や適用が変化していきました。律令法のもとで死罪の判断が行われ、身分制度と関連するさまざまな側面が浮き彫りとなっています。

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