母里友信

母里友信：黒田如水の忠臣、そして「日本号」の逸話で知られる武将

母里友信は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将です。黒田氏に仕え、その卓越した槍術と武勇で知られ、黒田二十四騎の中でも特に優れた八虎の一人として数えられています。幼名は万助、通称は太兵衛（または多兵衛）、但馬守を称しました。

出身と黒田氏への仕官

母里氏は出雲国の尼子氏に繋がる家系で、播磨国の国人でした。現在の兵庫県加古郡稲美町母里が本貫とされ、曽我一信の子として誕生しました。父・一信は播磨国で勢力を持っていた小寺氏に仕え、黒田職隆の与力的な立場にあったと伝えられています。

友信自身も永禄12年（1569年）、職隆の子である黒田孝高（黒田如水）に仕官しました。青山・土器山の戦いでは奮戦しましたが、一族郎党が戦死する事態に。しかし、孝高の計らいにより母里姓を名乗ることを許され、母里太兵衛となりました。

数々の戦場を駆け抜ける

天正元年（1573年）の印南野合戦で初陣を飾って以降、常に先鋒として活躍しました。天正6年（1578年）、荒木村重の反乱で主君・孝高が捕らえられた際には、栗山利安、井上之房らと共に有岡城に潜入し、孝高の安否を確認するなど、その忠誠心は揺るぎませんでした。

その後も孝高に従い、中国・四国を転戦。九州征伐では豊前宇留津城攻めで一番乗りを果たし、5,000石（後に6,000石）を与えられました。文禄・慶長の役にも従軍し、関ヶ原の戦いでは豊後国で蜂起した義兄・大友義統を降伏させるなど、数々の功績を挙げました。

黒田長政が筑前名島52万石に加増移封された際には、筑前鷹取城1万8,000石（うち2,000石は息子・友生）を拝領。生涯に76もの首級を挙げたという記録も残っています。

「日本号」と酒豪伝説

友信は、名槍「日本号」を手に入れた逸話でも有名です。文禄・慶長の役休戦中の出来事とされ、京都伏見城にいた福島正則に黒田長政の使者として赴いた友信は、正則から酒を勧められます。酒豪として知られていた友信でしたが、使者としてそれを固辞。しかし、正則のしつこく勧める言葉、そして黒田武士を侮辱する発言に激昂。盃を一気に飲み干すと、褒美として「日本号」を所望し、それを手に入れました。

この逸話は「呑取り日本号」として語り継がれ、「黒田節」にも歌われています。博多人形や銅像にもその姿が表現されています。現在、「日本号」は福岡市博物館に現物が、広島城にレプリカが展示されています。

後半生と最期

慶長11年（1606年）、後藤基次の出奔後、その領地である益富城主となります。「但馬守」の称号も長政から与えられ、江戸城の普請にも携わりました。

しかし、徳川家康からのねぎらいの書状に宛名が「毛利」と誤記されていたことから、長政の命により「毛利但馬守友信」を名乗るようになります。慶長13年（1608年）からは、桐山信行と共に長崎街道の冷水峠の整備にも携わりました。

慶長20年（1615年）6月6日、享年60歳で死去。墓所は福岡県嘉麻市大隈の麟翁寺です。福岡城二の丸そばには、かつて天神付近にあった友信の屋敷長屋門が移築され、福岡県文化財に指定されています。

その他の逸話

鷹取城の城主となった際の、黒田長政とのやり取りや、富士山と福智山の比較に関する逸話など、友信の人物像を示す様々なエピソードが残されています。また、子孫による柳生新影流兵法の奉納なども行われています。

母里友信は、その武勇、忠誠心、そして豪快な人となりで、黒田家、ひいては日本の歴史に名を残す武将と言えるでしょう。

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