毛利基

毛利 基（もうり もとい）の生涯と業績

毛利基は1891年に福島県の小さな村に生まれました。彼は幼い頃から学問に励んでいましたが、父親の死により、福島県立福島中学校を2年で中退することとなり、その後は東京へ向かい、警視庁の試験を目指しました。1915年に巡査となった毛利は、巣鴨署で高等課労働係に配属され、ここで共産党との関係が始まります。彼は勉強を重ね、巡査部長、警部補といったポジションに着実に昇進していきました。

1928年には、警視庁特別高等課労働係としての職務に携わり、三・一五事件の内偵に参加します。これが毛利にとっての重要な経験となり、共産党の内部構造を把握する手助けとなりました。1929年3月、彼は共産党再建の責任者であった菊地克巳を取り調べ、その信頼を得ることで共産党の詳細な組織図を作成し、四・一六事件での大規模検挙に貢献するのです。この功績により、毛利は特高課の特高係長に昇進しました。

1932年には、警視庁特別高等警察課が特別高等警察部に昇格し、毛利はその初代特高課長として任命されます。彼は情報収集のために共産党中央委員の飯塚盈延をスパイとして用い、党に大打撃を与えることに成功しました。この活動は特高内でも極秘とされ、毛利の名は「スパイ使いの名手」として知られるようになります。

この時期、共産党は「非常時共産党」と称されており、その影響力は戦前最大を誇っていました。毛利の取り組みには、尹基協射殺事件や赤色ギャング事件、熱海事件といった重大事件が含まれます。とりわけ、赤色ギャング事件は社会に大きな動揺をもたらしましたが、毛利の関与は後に議論の的となります。彼自身は事件の翌日の会議で「アナーキストによる犯行」と主張しており、彼の関与があったかどうかは不明確です。

1932年10月30日、毛利は熱海事件で共産党の地方幹部11人を一斉に逮捕します。この事件は共産党にとって誤算となり、事実上の壊滅を意味しました。毛利は、最高幹部の逮捕を計画していたものの、スパイMの裏切りによって計画が狂い、地方幹部のみの逮捕に終わりました。この後も、スパイによる情報提供を受け、次々に党の幹部を捕まえることができました。

さらに、1933年2月20日には、共産党員小林多喜二の虐殺に直接関与。毛利は「心臓に急変をきたした」と説明しましたが、この発言は多くの議論を呼び起こしました。彼は独自の能力でスパイを育成し、特高内での評価は極めて高かったのです。終戦直後には、彼の功績が認められ、表彰を受けました。最終的には佐賀県・埼玉県の警察部長に任命され、退職後は故郷に戻りました。

毛利基の生涯は、特別高等警察の活動と深く結びついており、彼の業績は日本の警察史において重要な位置を占めています。仮に彼が関与した事件の真実がどれであれ、彼の影響力とその時代背景を考えると、彼の存在は忘れてはならないものと言えるでしょう。

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