毛状突起

毛状突起（トリコーム）とは

毛状突起（もうじょうとっき、英: trichome）とは、植物の表皮細胞から形成される付属物の総称です。トライコームや毛茸（もうじょう）とも呼ばれ、植物体のあらゆる器官に見られます。

毛状突起の種類と機能

毛状突起は、単細胞性のものと多細胞性のものがあり、形態、構造、機能は多岐にわたります。主な機能として、以下のようなものがあります。

保護: 紫外線や乾燥、食害から植物体を守ります。
分泌: 特有の物質を分泌し、受粉を助けたり、身を守ったりします。
物質の排出: 体内の過剰な物質を外界へ排出します。

機能によって、腺（腺毛）と非分泌性の毛状突起（非腺毛）に分けられます。また、形態や発生する器官によって、毛、鱗片、乳頭突起、根毛などと呼ばれます。1つの植物体に複数種の毛状突起が見られることも珍しくありません。

毛の分類

毛は、細胞の数によって単細胞毛と多細胞毛に分けられます。

単細胞毛

単細胞毛（たんさいぼうもう、unicellular hair）は、1つの細胞からなる毛です。根毛も単細胞毛の一種です。サクラソウやサンシキスミレの花弁に見られる絨毛、ワタの種皮表面に生える綿毛なども単細胞毛です。綿毛は、種子の散布を助ける役割も果たします。また、ラン科植物の花弁に見られる食毛は、蛋白質や脂肪を貯蔵し、昆虫を集めるのに役立ちます。

細胞膜に珪酸や炭酸石灰を蓄え硬くなったものを剛毛と呼びます。ムクノキの葉に見られる剛毛は物を研ぐのに用いられていました。また、刺毛は、先端が鋭い構造を持ち、触れると痛みを与える剛毛の一種です。カナムグラやイラクサなどが持っています。

塩生植物では、塩嚢毛と呼ばれる特殊な毛状突起を持ち、体内の塩濃度を調整しています。アイスプラントの嚢状毛は、水を蓄える役割を果たします。

多細胞毛

多細胞毛（たさいぼうもう、multicellular hair）は、複数の細胞からなる毛です。ムラサキツユクサの雄しべの毛のように細胞が1列に並んだものや、分岐したものがあります。ナスやウツギの葉に見られる星状毛は、多細胞毛の一種です。グミやオリーブの楯状毛（鱗毛）は、傘のように並ぶ特殊な形状をしています。

鉤状毛

鉤状毛（こうじょうもう、hooked hair）は、基質に引っかかり、植物体を支える役割を持つ毛です。ヤエムグラやアカネなど、つる性の植物によく見られます。

吸水毛

吸水毛（きゅうすいもう、absorptive hair）は、空気中から水分を吸収する特殊な毛です。キダチルリソウやヤグルマソウに見られます。

感覚毛

感覚毛（かんかくもう、sensitive hair）は、物体が触れると動く毛で、感覚器官の一種です。ムジナモなどの水生植物に見られます。

大葉シダ植物の毛状突起

大葉シダ植物の毛状突起は、細胞列の数によって毛と鱗片に区別されます。

毛: 細胞列が1列のもの。ヒメシダ科やウラボシ科に見られる星状毛などがあります。
* 鱗片: 細胞列が2列以上のもの。根茎や葉柄に見られ、色や形は種によって異なります。

腺毛

腺毛（せんもう、glandular hair）は、粘液や蜜などを分泌する毛状突起です。揮発油を分泌する精油腺、粘性の高い物質を分泌する粘毛、消化酵素を分泌する消化毛などがあります。蜜を分泌する蜜腺も腺毛の一種です。

毛状体

毛状体（もうじょうたい、emergence）は、表皮以外の組織も関与する植物体表面の突起構造です。モウセンゴケの腺毛やバラの棘などが毛状体に当たります。

毛状突起は、植物の種類や生育環境によって様々な形態と機能を持ち、植物の生存戦略において重要な役割を果たしています。

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