民兵条例

民兵条例とは

民兵条例（Militia Ordinance）は、1642年3月5日にイングランドの長期議会で可決された法案です。この条例は、清教徒革命（イングランド内戦）の勃発直前に成立し、議会派が軍の統帥権を掌握することを明記したため、議会派と王党派の対立を決定的に深める要因となりました。

当初、この法案は「民兵法案（Militia Bill）」として提出されましたが、議会が単独で可決する必要性から、最終的に国王の裁可を必要としない条例の形式に変更されました。

条例成立の背景

1641年11月、議会が提出した「大諫奏」がチャールズ1世に拒否されたことで、内戦の可能性が高まりました。議会は軍事力確保のため、軍の統帥権を国王から議会に移すことを模索し始めます。

12月には、急進的な独立派を率いるアーサー・ヘジルリッジが民兵法案を提出し、審議が開始されました。しかし、1642年1月、チャールズ1世が議会指導者であるジョン・ピム、ジョン・ハムデン、ヘジルリッジら5人の議員を逮捕しようと議会に乗り込むという事件が発生。この強硬な行動に対し、ロンドン市民が5人を匿ったため、チャールズ1世は撤退を余儀なくされます。この事件は、議会における国王への信頼を失わせ、議会は法案の審議を続行します。

オリバー・クロムウェルの提案とピムの働きかけにより、軍備増強と実行のための委員会が設置され、議会は着々と内戦への準備を進めていきました。

条例の可決と内戦への突入

3月5日、民兵法案は下院と上院で可決されましたが、チャールズ1世は当然のように裁可を拒否しました。これに対し、議会は法案の形式を国王の裁可を必要としない条例に変更し、民兵条例として可決しました。

民兵条例の内容は、議会が民兵軍の統帥権を掌握し、各州の司令官や統監の任命権も議会が握るというものでした。さらに、6月には民兵条例に関連する議会の宣言で議会主権を唱え、大諫奏に続く国王大権への挑戦を試みました。これに対し、チャールズ1世は条例を禁止する命令を各地に伝え、議会と国王は互いに反対派を攻撃し、自己の立場を正当化する宣伝活動を繰り広げ、両者の対立は激化の一途を辿ります。

6月、議会からの和平提案（19か条提案）をチャールズ1世が拒否したため、7月、議会は1万人の募兵と治安委員会の設置を決定。エセックス伯ロバート・デヴァルーを総司令官に任命し、8月に国王が挙兵したことで第一次イングランド内戦が勃発しました。

内戦における民兵軍

議会派の主力となった民兵軍は、プロの国王軍とは異なり、素人同然の兵士で構成されていました。また、地元意識が強く、遠征を嫌がる傾向があったため、組織的な欠陥が多く、指揮系統も混乱していました。そのため、内戦初期は国王軍に劣勢を強いられることとなります。

議会派は、この状況を打開するため、募兵制度の改革、東部連合や西部連合の結成、鉄騎隊の創設など、様々な試行錯誤を重ねました。そして、1645年にはニューモデル軍条例と辞退条例によって、ようやく軍の刷新を成し遂げ、内戦を終結させるに至りました。

民兵条例は、イングランド内戦の直接的な引き金となった重要な法案であり、その後のイギリスの歴史に大きな影響を与えました。

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