水野廣徳

水野広徳の生涯と業績

水野広徳（みずの ひろのり、生年1875年5月24日 - 没年1945年10月18日）は、日本の海軍軍人、軍事評論家、そして架空戦記作家として知られています。彼の父親は旧松山藩の出身である水野光之で、彼は愛媛県の三津浜（現在の松山市）で生まれました。水野は幼い頃に両親を失い、伯父に育てられた後、松山中学校を卒業し、日清戦争後の1898年に江田島の海軍兵学校を卒業しました。

水野は同校の26期生であり、彼の同期には野村吉三郎や小林躋造がいました。彼らは生涯の友人となり、何度も助け合う存在となりました。入隊後、水野は義和団の乱に陸戦隊小隊長として参戦し、その後1903年に海軍大尉に昇進しました。日露戦争では、第41号水雷艇の艦長としていくつかの重要な海戦に参加し、彼の記録は全国に広まりました。この時期に書いた海戦に関する記録は後に彼に名声をもたらしました。

水野は、日露戦争が終わった1906年に軍令部戦史編纂部に勤務し、『明治三十七八年海戦史』の編纂に従事しました。彼は、黄海海戦や日本海海戦に関する重要な部分を担当しました。1911年には著書『此一戦』を刊行し、日本海海戦を生き生きと描写しました。

その後、舞鶴水雷団や佐世保海軍工廠、海軍省文庫などでさまざまな役職を歴任し、第一次世界大戦中には欧米諸国を視察し、その体験をもとに反戦を説くようになります。彼は、戦争がもたらす悲劇を実感した結果、平和主義者へと転身し、経済的な視点から軍備の撤廃を主張しました。特に、戦争を回避するための国民の知見や行動の重要性を強調しました。

水野は大正10年には『東京日日新聞』に連載された「軍人心理」で軍人に選挙権を与えるべきだと主張し、これが事態を悪化させる要因となり、謹慎処分を受けました。彼はその後、評論家としての道へ進み、反戦の記事を数多く発表しました。特に、ワシントン会議に対する考察を通じて、彼の平和論は多くの読者に受け入れられるようになりました。

水野は1930年に『海と空』を発表し、空襲を受ける東京を描写しました。この作品では、航空戦力が戦局を決定づけると警告し、後に東京大空襲が実現することを予見しました。その後も、日米戦争に関する著作を相次いで発表し、彼の分析はアメリカのメディアにも取り上げられました。

戦争が進行する中で、水野は自らの信念を貫き、国民生活を優先とし、国民の意志を反映させる政治を求め続けました。1941年には情報局から執筆禁止者にされ、その数年後、彼は腸閉塞に苦しみ、1945年に亡くなりました。水野の業績は、今もなお反戦平和の象徴として人々に記憶されています。

水野の評価は、特に彼の平和主義者としての転身に関して多岐にわたります。各種の文献や研究を通じて、彼の生涯と業績は日本の平和主義への重要な寄与として再評価され続けています。

もう一度検索