江釣子村

江釣子村（えづりこむら）

岩手県の中央部に位置していた江釣子村は、和賀郡に属し、1991年 4月1日に近隣の和賀町、そして北上市との広域合併により、新たな北上市の一部となってその歴史に幕を閉じました。この村は、合併が目前に迫った時期に、日本の村の中で最も人口密度が高いという特異な記録を持っていました。

地勢と立地

村は、岩手県のほぼ中心に位置する和賀盆地の中に収まっており、その西側には奥羽山脈が、東側には北上山地が連なる地形的な特徴を持っていました。村域の大部分は平坦でしたが、北側や西側は奥羽山脈の山麓にあたるため、標高がやや高くなっています。
江釣子村は、地域の交通、文化、産業、経済が交わる結節点に位置しており、この地理的な優位性が村の発展に大きく寄与しました。主要な幹線道路として国道4号北上バイパスや国道107号が通り、高速交通網では東北自動車道の北上江釣子インターチェンジが設置されていました。また、鉄道路線ではJR北上線が通り、江釣子駅が村民の足となっていました。隣接する北上市や花巻市との間に位置するという地の利を活かし、江釣子村は単なる農村から脱却し、郊外都市としての性格を強めていきました。特に、「工業田園都市」を標榜し、積極的な工場誘致が進められた結果、多くの企業が進出し、これに伴い人口が著しく増加する傾向が続いていました。

人口と面積

江釣子村には、合併直前には約1万人に迫る人々が居住していました。この人口規模に対し、村の面積は18.04平方キロメートルと、岩手県内の自治体の中では最も狭いものでした。この狭い面積に多くの人が暮らしていたため、人口密度は非常に高く、岩手県内の市と比較しても水沢市や盛岡市に次ぐ水準であり、特に県内の「村」という区分においては群を抜いて一番高い数値を示していました。そして、これが全国の村の中でも最高レベルであったことから、「日本一人口密度の高い村」として知られることとなったのです。

沿革

江釣子村は、1889年（明治22年）4月1日、町村制の施行に伴い、東和賀郡に属していた上江釣子村、下江釣子村、滑田村、新平村、鳩岡崎村、北鬼柳村という6つの村が合併して発足しました。その後、郡の再編を経て、1897年（明治30年）4月1日からは和賀郡に所属する自治体となりました。交通インフラの整備は村の歴史において重要な節目となりました。1923年（大正12年）4月15日には北上線の江釣子駅が開業し、地域住民の移動手段が確立されました。高度経済成長期に入ると、周辺自治体との境界変更が何度か行われました（1955年、1965年、1966年、1967年、1970年）。村としての象徴もこの時期に制定されました。1966年（昭和41年）12月22日には村章が定められ、そのデザインは「えづりこ」の「え」を図案化したもので、村民が一体となって力強く発展していく願いが込められていました。交通網のさらなる充実は1977年（昭和52年）11月19日、東北自動車道の北上江釣子インターチェンジが開通したことで実現し、広域からのアクセスが飛躍的に向上しました。そのわずか数日後の11月25日には、村の象徴としての村花（ヒマワリ）、村鳥（キセキレイ）、村木（スギ）が制定されました。教育への注力も行われ、1980年（昭和55年）8月24日には教育の質の向上を目指す「教育の村宣言」が行われました。さらに翌1981年（昭和56年）6月18日には、村の理念を示す村民憲章が制定されるなど、村としてのアイデンティティ確立と発展に向けた取り組みが進められました。そして、1991年（平成3年）4月1日、江釣子村はその歴史を閉じ、和賀郡和賀町、そして北上市との合併により、新たな「北上市」の一部として再出発することとなりました。

行政と村の象徴

江釣子村には歴代の村長が村政を担いました。村のシンボルとしては、1977年 11月25日に制定された村花「ヒマワリ」、村鳥「キセキレイ」、村木「スギ」がありました。村章は、1966年 12月22日に制定され、「えづりこ」の頭文字「え」をモチーフに、村民の団結と発展への願いが込められたデザインでした。教育面では、1980年 8月24日の「教育の村宣言」を通じて、教育環境の充実と質の向上を目指す村の姿勢が明確に打ち出されました。

産業、教育、交通

産業面では、交通の利便性を背景に工場誘致が進み、「工業田園都市」として発展した側面がありましたが、商業施設としては、江釣子ショッピングセンターパルが村内に立地し、村民の生活を支える役割を果たしていました。教育施設としては、江釣子村立江釣子中学校と江釣子村立江釣子小学校があり、村の子どもたちの学び舎となっていました。交通網は、既に沿革の項でも触れた通り、高速道路として東北自動車道の北上江釣子インターチェンジ、一般国道として国道4号北上バイパスおよび国道107号が村域を通り、鉄道ではJR北上線の江釣子駅が利用可能でした。これらの交通インフラは、村の発展に不可欠な要素であり、合併後の北上市にとっても重要な地域資源となっています。

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