池口寺 (長野県大桑村)

池口寺

池口寺（ちこうじ）は、長野県木曽郡大桑村殿に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。瑠璃山と号し、木曾西国三十三観音霊場二十三番、中部四十九薬師霊場二十三番札所として、地域の人々に親しまれています。

歴史

寺伝によれば、池口寺は承平7年（937年）に創建されたと伝えられています。近江国神崎郡の郡司であった源義寛が、先祖の供養のために光明池の傍らに一宇を建立し、医王尊仏を安置したのが始まりとされています。開山には天台宗の明雲が招かれました。

徳治3年（1308年）には、銅製鰐口（長野県県宝）が奉納されており、この頃には既に一定以上の信仰を集めていたことが窺えます。しかし、建武2年（1335年）には火災により、鎌倉時代後期に建てられたと推測される薬師堂（長野県県宝）以外の堂宇を焼失。古記録や寺宝も同時に失われました。

その後、暦応3年（1340年）に当時の郷司であった池口入道祥悟が堂宇の再建に尽力したとされていますが、その人物像については詳しいことは分かっていません。天正2年（1574年）には、領主である木曾氏の菩提寺である定勝寺から貴山を招き、天台宗から臨済宗へと改宗しました。

天正18年（1590年）には、豊臣秀吉の重臣で木曾代官および犬山城主であった石川貞清より、寺領の寄進がありました。文化3年(1806年)に十王堂が再建され、文政13年(1830年)には庫裏が、天保13年(1842年)には鐘楼門が建立されました。弘化2年(1845年)には、十王堂の再建に対し門・半場の両家からの寄進があり、弘化4年(1847年)には木下傳助により半鐘が寄進されました。嘉永7年(1856年)には土蔵が再建されています。太平洋戦争で供出したため失われていた梵鐘は、昭和23年(1948年)3月に新たに設置されました。

境内

池口寺の境内には、以下の堂宇があります。

本堂
鐘楼門
庫裡
木小屋
隠寮
薬師堂
土蔵
十王堂

鐘楼門

切妻、桟瓦葺、一間一戸の四脚楼門です。

薬師堂

薬師堂は、元は小川の里にあったと伝えられていますが、鎌倉時代後期に造営されたとされています。建物は木造平屋建て、宝形造、こけら葺き、平入で、桁行三間、梁間四間。外壁は真壁造り板張りです。内部には、中央に薬師如来像、向かって右に日光菩薩像、左に月光菩薩像が安置されています。

薬師如来像は鎌倉時代の作とされ、特に台座の蓮弁には平安時代の技法が見られます。脇侍の日光菩薩像と月光菩薩像は、室町時代中頃に善光寺の仏師である妙海の作と伝えられています。ただし、三尊とも作者や年号を特定できる銘や文書は見つかっていません。

薬師堂は元々内陣に本尊薬師如来を安置した回廊式でしたが、いつの時期か不明ですが、中の柱2本が切られ、仏像が正面奥に祀られるようになったため、長らく文化財指定されていませんでした。調査の結果、薬師堂には正応2年(1289年)に伐採された木曽ヒノキが使われていることが判明しています。

元禄15年(1702年)には薬師堂が修復され、正徳4年(1714年)には薬師堂の前に石段が設置されました。正徳5年(1715年)には須原村の山本源兵ヱが水鉢を奉納し、享保16年(1731年)と享和2年(1805年)には薬師堂の上葺が修復されました。天保10年(1839年)には下半坂四郎が薬師堂前の敷石を奉納しています。平成2年(1990年)に長野県の県宝に指定されました。老朽化のため、平成18年(2006年)から復元工事に着手し、平成22年(2010年)10月31日に落慶式が行われました。令和3年(2021年)8月には、土砂崩れの影響で薬師堂の一部が損壊したため、修繕が施されています。

寺宝

池口寺には、以下の寺宝が所蔵されています。

涅槃図（永享2年(1745年)）
白隠、遂應、東嶺、春應の書画
桧立木伐木願、寺請状、年貢考慮の願
出山仏画
達磨の画
臨済の画
証状

文化財

池口寺には、大桑村指定文化財として以下の仏像が指定されています。

薬師如来像（鎌倉時代初期）
日光菩薩像、月光菩薩像（室町時代中期）

参考文献

『大桑村誌　下巻』第六編　現代の歩み　第二章　発展する大桑　五　教育・文化　(三)大桑村の寺院　3　池口寺　p784～p789　大桑村　昭和63年
* 『大桑村の歴史と民話』　第七章 大桑村の神社仏閣　第二節　仏閣　三、池口寺　p315～p316　志波英夫 1978年

脚注

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