沖波 (駆逐艦)

沖波 (おきなみ): 夕雲型駆逐艦の激動の艦歴

はじめに

沖波は、日本海軍が誇る夕雲型駆逐艦の14番艦として、太平洋戦争において活躍した艦艇です。本稿では、沖波の建造から終焉に至るまでの艦歴を、詳細な記録に基づいて解説します。

建造と初期の活動

沖波は1942年（昭和17年）8月5日、舞鶴海軍工廠で起工されました。1943年（昭和18年）5月25日に命名され、同日一等駆逐艦として登録。同年7月18日には進水、12月10日に竣工しました。初代艦長には牧野坦中佐が就任。竣工後は第十一水雷戦隊に編入され、瀬戸内海で訓練を受けました。その後、横須賀を経て、1944年（昭和19年）1月には、損傷した航空母艦雲鷹の救援に向かうなど、多様な任務に従事しました。

第31駆逐隊への編入とマリアナ沖海戦

1944年2月10日、沖波は岸波、朝霜と共に第二水雷戦隊隷下の第31駆逐隊に編入。同駆逐隊は船団護衛任務や対潜警戒に従事しました。6月には、大和型戦艦を護衛して渾作戦に参加。その後、小沢機動部隊に合流し、マリアナ沖海戦にも参戦しました。激戦を潜り抜けた沖波は、一時帰投後、7月には遊撃部隊を護衛しリンガ泊地へ進出。その後は同地で訓練に励みました。

レイテ沖海戦での活躍と損傷

10月、捷一号作戦におけるレイテ沖海戦では、第一遊撃部隊に所属。サマール沖海戦では、沈没した重巡洋艦鈴谷の乗組員412名（戦史叢書では415名）を救助するという、人道的側面も示す活躍を見せました。さらに、姉妹艦早霜の救援にも尽力。その後、重巡洋艦熊野を護衛してマニラに帰投しました。

多号作戦と沈没

レイテ沖海戦後、沖波は第二遊撃部隊に編入され、多号作戦に参加しました。11月5日、マニラ空襲で損傷を受け、応急修理中に11月13日、マニラ大空襲により沈没しました。残骸は戦後、浮揚・解体されました。

参考文献

本稿の作成にあたり、以下の文献を参考にさせて頂きました。

池田清『重巡摩耶　元乗組員が綴る栄光の軌跡』
宇垣纏『戦藻録』
生出寿『連合艦隊・名指揮官の生涯　戦場の将器　木村昌福』
生出寿『砲術艦長　黛治夫　海軍常識を覆した鬼才の生涯』
大井篤『海上護衛戦』
岡本孝太郎『舞廠造機部の昭和史』
海軍歴史保存会編『日本海軍史』
岸見勇美『地獄のレイテ輸送作戦　敵制空権下の多号作戦の全貌』
木俣滋郎『日本空母戦史』『日本戦艦戦史』『日本水雷戦史』『日本軽巡戦史』『潜水艦攻撃』
古村啓蔵ほか『重巡十八隻　軍縮条約が生んだ最先端テクノロジーの結晶』
佐藤清夫『駆逐艦「野分」物語　若き航海長の太平洋海戦記』
重本俊一ほか『陽炎型駆逐艦　水雷戦隊の中核となった精鋭たちの実力と奮戦』
手塚正己『軍艦武藏』
原為一ほか『軽巡二十五隻　駆逐艦群の先頭に立った戦隊旗艦の奮戦と全貌』
福田幸弘『連合艦隊　サイパン・レイテ海戦記』
淵田美津雄、奥宮正武『機動部隊』
防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書』
松永市郎「不死身の第九号輸送艦」
雑誌『丸』編集部 編『ハンディ判日本海軍艦艇写真集17』『重巡洋艦戦記』『小艦艇戦記』
矢花冨佐勝『駆逐艦勤務　日本海軍兵士の艦上での日常』
山本平弥ほか『秋月型駆逐艦<付・夕雲型・島風・丁型>』
歴史群像編集部編『PHOTO DOCUMENT　夕雲型駆逐艦「沖波」大破着底』『軽巡球磨・長良・川内型』
アジア歴史資料センター
その他多数の一次資料、二次資料

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