沖縄語

沖縄語（沖縄方言）詳細解説

沖縄語、または沖縄方言（沖縄弁）は、沖縄諸島で用いられる言語です。琉球諸語に属し、現地では「ウチナーグチ」と呼ばれます。大きく北部方言と中南部方言に分けられ、その境界はうるま市と金武町、恩納村と谷茶の間付近に位置します。ユネスコは中南部方言を「沖縄語」と分類し、北部方言は与論島、沖永良部島の方言と共に「国頭語」に分類しています。本記事では主に中南部方言を解説します。

沖縄語の分類と歴史

沖縄語は北部方言と中南部方言の2つの主要なグループに分類されます。地理的には南部に位置する津堅島や久高島では、北部方言の特徴であるハ行p音が見られます。

首里方言は、琉球王国の時代、首里城のある首里に集まる按司同士の共通語として発展しました。尚真王の中央集権化政策（1476-1526年）によって完成され、沖縄最古の歌謡集『おもろさうし』にも使用されていることから、その源流とされています。王族や上流階級の公用語でしたが、庶民の間ではそれぞれの土地の方言が使われていました。公文書や琉歌、組踊などの文芸作品は、主に首里方言で書かれており、各地で失われた古い発音を保持していました。士族男子は訓練によって、規範的な首里方言の発音を身につけていました。一方、商売人の間では那覇方言が広く使われ、明治時代以降は地域共通語としての地位を確立しました。首里方言は士族階級の解体とともに衰退し、20世紀後半には体系的な使用はなくなりました。沖縄語には、日本語の「古語」や中国語由来の語彙も混在しています。

音韻体系

沖縄語の音韻体系は、母音、半母音、子音、拍音から構成されます。母音は/i, e, a, o, u/、半母音は/j, w/、子音は/p, b, t, d, k, g, ʔ, s, z, c, h, r, m, n/、拍音は/N, Q/です。/e/と/o/は短母音としては少なく、多くは長母音として現れます。/N/（撥音）と/Q/（促音）は、日本語とは異なり語頭にも現れます。また、母音・半母音・撥音の前で、声門破裂音/ʔ/の有無が区別されますが、久米島方言では/ʔ/はなくなっています。北部方言や、中南部方言の一部では、有気音と無気喉頭化音の区別がありますが、大部分の中南部方言では区別はありません。那覇方言など一部では/d/が/r/に変化し、/d/音素を欠く場合もあります。

日本語との対応関係

沖縄語では、日本語のオ段母音がuに、エ段母音がiに対応する傾向があり、多くの場合、オ段とウ段、エ段とイ段が統合されています。ただし、カ行イ段のキは、多くの場合ci（チ）に変化しています。タ行・サ行ではウ段がイ段に統合されており、日本語のスはsi（シ）、ツはci（チ）となりますが、ソ、トはsu、tuとなり区別が残されています。

アクセント

中南部方言は、二型アクセント体系を持ちます。例えば、首里方言には平板型と下降型の2種類があり、下降型は2拍の語では第1拍が高く、3拍以上の語では第2拍までが高く、第3拍以降が低くなります。アクセント型は、九州西南部の二型アクセントと類似性があります。

文法

沖縄語の文法は、古典日本語と共通点が多く、終止形と連体形の区別、連体格「ガ」、主格「ヌ」などが挙げられます。「ガ」「ヌ」の敬体・常体の使い分けもあります。

動詞活用

沖縄語の動詞は、複数の語幹を持ち、それぞれの語幹に接辞が付くことで活用形が作られます。「書く」(カチュン)や「取る」(トゥイン)を例に、基本語幹、連用語幹、派生語幹、音便語幹の4種類の語幹と、それぞれの活用形を説明します。日本語よりも複雑な活用体系を持ちます。

形容詞

形容詞は語幹＋「さ」に動詞「ある」を付けた形から成り立ち、動詞と同様に活用します。連用形1は語幹＋クの形になります。終止形語尾はサンとシャンがありますが、慣用ではサンに統一されています。

助詞・代名詞

格助詞のガとヌは、主格と属格の両方の用法を持ち、使い分けがあります。係助詞には強調のル、疑問のガ、主題のヤなどがあります。人称代名詞は日本語より種類が少ないです。

言語としての沖縄語

ユネスコは2009年の調査で、沖縄語を独立した言語と分類しました。しかし、日本政府は「日本語」が最も普通に使われる言語であり、地方で使われる言葉は「方言」であるという見解を示しています。国際SILのエスノローグでは「中央沖縄語」として掲載されていますが、日本国内では使われていません。

沖縄語が登場する作品

沖縄語は、ラジオ番組、映画、テレビドラマ、アニメなど、様々な作品で使用されています。

沖縄語に由来する命名例

沖縄本島で発見された洞窟性アリは、沖縄語の「ガマグマヤー」（洞窟に引きこもるもの）に由来する学名で命名されました。

参考文献

(参考文献リストは省略)

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