沢山池

沢山池（さやまいけ）

沢山池は、長野県上田市野倉と前山にまたがる人造湖で、地元では「沢山湖（さやまこ）」とも呼ばれています。この池は、信濃川水系の産川に建設されたダムによって形成されたダム湖であり、その歴史と役割は地域の発展に深く関わっています。

ダムの構造と機能

沢山池のダムは、高さ26.9メートルのアースダムです。アースダムとは、土や岩などの自然材料を積み上げて作られたダムのことで、内部には粘土のコア（遮水壁）が設けられています。このコアが水の浸透を防ぎ、ダムとしての機能を果たしています。当初、このダムは灌漑用水を確保するためのため池として建設されましたが、後に改修が行われ、洪水調節機能が追加されました。現在では、治水と利水の両方を目的とした多目的ダムとして利用されています。

歴史

沢山池の建設は、1934年（昭和9年）9月に始まりました。当時、西塩田村野倉（現在の上田市野倉）の産川をせき止めて、新たなため池を造るという大規模な事業でした。総工費は約28万2000円（当時）、延べ12万9300人以上が動員され、1938年（昭和13年）3月20日に工事が完了しました。完成したダム湖は「沢山池（澤山瀦水池）」と名付けられました。

塩田平は古くから水不足に悩まされており、多くのため池が築かれてきました。沢山池は、これらのため池に水を供給する重要な役割を担っていました。しかし、完成当初から漏水の問題を抱えていたため、戦後には湖底部へのセメントコンクリート注入による漏水対策が行われました。また、池の水温が低いことが稲の発育に影響を与えるという問題も指摘され、1951年（昭和26年）から1952年（昭和27年）にかけて、表層の温水を取水する設備が新たに設けられました。

再開発

年月が経ち、ダムが老朽化したため、1987年（昭和62年）8月から県営防災ダム事業として改修工事が始まりました。この改修では、従来の灌漑用水確保に加えて、洪水調節機能が新たに盛り込まれました。具体的には、自由越流形の余水路に放流用ゲートが1門追加され、放水路として延長119メートルのトンネルが掘削されました。堤体の上流側には、700平方メートルにわたる防波ブロックによる護岸工事が施され、堤頂右岸にはダム管理事務所が建設されました。総事業費6億6400万円をかけて行われたこの改修工事は、1996年（平成8年）3月に完了しました。事業完了を記念して、湖畔の沢山池管理事務所前には石碑が建立されました。碑文には「産川之泉澤山」と刻まれ、当時の長野県知事である吉村午良氏によって揮毫されています。

周辺環境

沢山池は、上田市塩田平の山奥に位置しており、周辺は保安林として保護されています。池の東側から南側にかけて林道が整備されており、訪れるためにはいくつかのルートがあります。主なルートとしては、別所温泉から長野県道177号を経由し上田市野倉の本村地区から進むルート、上田市前山から産川に沿って進むルート、上田市手塚から進むルート、そして長野県道12号から産川上流側の林道を進むルートがあります。

池周辺の林道は道幅が狭く、乗用車一台がやっと通れる程度です。また、上田市前山からのルートは、崖崩れのためダム堤頂左岸より上田市前山の鞍が淵（鞍が淵森林浴公園）までの区間が全面通行止めとなっています。

まとめ

沢山池は、その建設から今日に至るまで、地域の生活と産業を支える重要な役割を果たしてきました。灌漑用水の確保だけでなく、洪水調節機能も備えた多目的ダムとして、今後も地域社会に貢献していくことが期待されます。

脚注

[1] 上田市誌編さん委員会編『上田市誌 近現代編 (3) 現代産業へのあゆみ』2002年10月1日、上田市上田市誌刊行会発行。
[2] 信濃毎日新聞社編集局編『信州の湖沼』信濃毎日新聞社、1973年3月28日、31 - 33ページ。

関連項目

ダム
日本のダム - 日本のダム一覧 - 中部地方のダム一覧
フィルダム - アースダム
都道府県営ダム
多目的ダム - 日本の多目的ダム一覧
人造湖 - 日本の人造湖一覧 - ため池 - ため池百選

外部リンク

沢山池 - ダム便覧
上田市ため池ハザードマップ 沢山池

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