河津掛け

河津掛け（かわづがけ）

河津掛けは、相撲の決まり手の一つであり、柔道における投技の一種です。相撲では日本相撲協会が定める決まり手八十二手の中に含まれ、柔道では横捨身技に分類されます。講道館や国際柔道連盟 (IJF) では「河津掛」と表記されます。

相撲における河津掛け

相撲での河津掛けは、相手が外掛けや切り返しで攻めてきた際に、逆に相手の左脚に内側から右脚を掛け、右足の甲で相手の左脚を引っ掛け、右腕を相手の首に巻いて後方に倒す技です。

書籍『日本相撲伝』(1902年)によると、本来の河津掛けは、右脚の親指と人差し指で相手の左くるぶし下を挟み、相手の首を強く抱き込み、のしかかって崩し倒す技とされています。

大相撲では珍しい決まり手ですが、過去には関脇陸奥嵐や大関貴ノ浪が得意としていました。近年では、2012年3月場所で前頭16枚目隆の山が同14枚目勢に、2022年11月場所では関脇豊昇龍が西前頭3枚目翠富士にこの技で勝利しています。

特に貴ノ浪は、1994年1月場所で横綱曙に、1996年1月場所千秋楽の優勝決定戦で横綱貴乃花に河津掛けで勝利し、注目を集めました。1960年に大相撲の決まり手が70手になった際、切り返しから独立した決まり手となりました。

アマチュア相撲（小学生、中学生）では、危険防止のため禁じ手とされており、使用した場合は競技が中止され、再試合となります。同一選手が二度使用した場合は、審判員の協議により負けとなります。

掛反（かけぞり）

掛反は、潜って右腕を相手の左腋に差し、右脚を相手の左脚に内から掛けて体を反らせながら捻り倒す技で、河津掛けの一種とされます。『日本相撲伝』では、河津掛けと区別され、掛反は身を沈めて、河津掛けは体を伸ばして行うとされています。

柔道における河津掛

柔道での河津掛は横捨身技に分類されますが、講道館ルール、IJFルール共に禁止技です。1955年5月に禁止されました。これは、速く強く掛けると相手の膝を負傷させる危険性が高いためです。しかし、1982年10月の講道館柔道技名称投技発表時、1995年のIJF技名称発表時、ともに禁止技にもかかわらず技名称に含まれていました。

試合で見られる例としては、大内刈や内股など、相手の股下に脚を差し入れる技を掛けた際に、脚が絡んでしまい、そのまま後に倒れ込むケースがあります。

河津掛は重大な反則であり、即座に反則負けとなるため、これらの技を掛ける際には注意が必要です。柔道の正式な技名は送り仮名を送らないことになっているので、正式名は「河津掛」です。

サンボ、レスリングなどでの河津掛け

柔道で禁止技となった河津掛ですが、柔道を源流とするサンボにおいては独自の進化を遂げました。サンボの河津掛は、大内刈のように脚を絡めた後、相手と向き合う形に踏み込み、反るように投げる技です。この技術は、フリースタイルレスリングにも応用されています。

フック・レッグ・アンド・ソルト

フック・レッグ・アンド・ソルトは、右腕での小手投げの体勢から右脚を河津掛けし、ブリッジして後ろに反り投げる技です。

プロレスでの河津掛け

プロレスでは、力道山がルー・テーズのバックドロップを河津掛で防いだ例があります。また、ジャイアント馬場が河津掛を掛けながら相手もろとも後ろに倒れ込む河津落とし（かわづおとし）という技を編み出しました。

名称の由来

『大相撲大事典』によると、名称は脚の形状からカエル（かわず）に由来し、かつては「蛙掛け」（かわずがけ）と呼ばれていました。「河津」の表記に変わったのは、『曽我物語』にある河津祐泰と俣野景久が相撲を取った話が影響している可能性が指摘されています。

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