河越重頼

河越重頼：源氏兄弟の対立に翻弄された武蔵の武将

河越重頼（かわごえ しげより）は、平安時代末期に武蔵国入間郡河越館を拠点とした武将です。桓武平氏の流れを汲む秩父氏の一族であり、武蔵国における有力な勢力でした。祖父の秩父重隆も任じられた「武蔵国留守所総検校職」という、武蔵国の軍事統率権を有する役職に任じられています。

生涯

秩父党の嫡流として

久寿2年（1155年）の大蔵合戦で祖父・秩父重隆が討たれるという悲劇に見舞われます。その後、保元の乱では源義朝に従い、平治の乱では義朝が敗れるという苦難を経験しました。義朝の嫡男である源頼朝が伊豆国に流罪となると、重頼は妻を通じて頼朝を支援しました。

永暦元年（1160年）には、所領を後白河上皇に寄進し、荘官となります。上皇はさらに京都の新日吉山王社へ寄進したため、所領は新日吉社領河越荘と呼ばれるようになりました。

頼朝への臣従と悲劇

治承4年（1180年）に頼朝が挙兵すると、当初は平家方についたものの、後に頼朝の傘下に入り、御家人として重用されます。頼朝の嫡男・源頼家が誕生した際には、妻が乳母として儀式に参加するなど、頼朝との関係は良好でした。

寿永3年（1184年）には、源義仲追討軍に参加し、都で活躍します。しかし、源頼朝と源義経の対立が深刻化すると、重頼は義経の義父という立場から頼朝に敵対視されるようになります。文治元年（1185年）、ついに重頼は誅殺され、所領も没収されました。

重頼死後の河越氏

重頼の死後、河越氏は一時混乱しましたが、文治3年（1187年）には、頼朝によって河越荘が河越尼に安堵されます。重頼の次男・重時、三男・重員は、しばらくの間歴史の表舞台から姿を消しますが、嘉禄2年（1226年）には、重員が武蔵国留守所総検校職に補され、河越氏は復権を果たしました。

河越重頼は、源平合戦という激動の時代に、武蔵国の武将として生きました。源頼朝との関係を通じて一時は繁栄を極めましたが、源氏兄弟の対立に巻き込まれ、悲劇的な最期を遂げました。しかし、その血筋は絶えることなく、子孫たちは河越氏を再興し、鎌倉幕府において重要な役割を担っていくことになります。

参考文献

岡田清一 編『河越氏の研究』名著出版〈第2期関東武士研究叢書4〉、2003年。
落合義明『中世東国の「都市的な場」と武士』山川出版社、2005年。
* 木村茂光「河越重頼の妻と妹―鎌倉初期の河越氏をめぐる一齣」『帝京史学』第30号、帝京大学文学部史学科、2015年、83-100頁。

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