法光寺 (大津市)

法光寺（ほうこうじ）

法光寺は、滋賀県大津市苗鹿にひっそりと佇む天台宗の寺院です。光明山と号し、本尊には人々の病苦を癒す薬師如来を祀っています。この寺は、小槻氏という豪族の氏寺として創建されたと伝えられています。

歴史

法光寺の歴史は古く、仁寿元年（851年）に小槻今雄がこの地を与えられたことに始まります。貞観5年（863年）には、今雄によって正式に寺院として創建されました。一説には、それ以前に最澄によって延暦寺の末寺として開基され、那波加神社の別当寺であったとも言われています。

この地は小槻氏と深い関わりがあり、「雄琴」という地名も今雄の名に由来するとされています。周辺には、今雄を祀る雄琴神社や小槻氏の祖先である於知別命を祀る那波加神社が鎮座し、法光寺とは神宮寺・鎮守社の関係にあります。

中世には、法光寺領である雄琴荘・苗鹿荘を巡って、小槻氏と妙法院門跡との間で訴訟が起こりました。最終的には小槻氏の領地となりましたが、その後、小槻氏が壬生家と大宮家に分裂すると、再び領地を巡る争いが起こりました。壬生家領となった法光寺領は、戦国時代には六角氏の支配下に入り、六角氏は壬生家に80石（実際には50石）を上納することになりました。

境内

かつては堂舎24宇、支院僧坊30余寺を誇った法光寺ですが、元亀2年（1571年）の織田信長の比叡山焼き討ちの際に焼失してしまいました。その後、延享3年（1746年）に再興が図られましたが、現在は数棟の堂宇が残るのみとなっています。本堂は1916年に建造されたものです。

境内には、小槻今雄の墓と伝えられる石造宝塔があります。この宝塔は、元慶8年（884年）7月7日に没した今雄の墓であるとされ、元々は境内裏山にある法光寺古墳群の中央主墳上に建てられていました。毎年7月7日には、今雄忌として供養が行われています。

また、境内には苗鹿地蔵堂があり、最澄が彫ったとされる「坂本六地蔵」の一つである苗鹿地蔵が安置されています。この地蔵は、元々街道沿いにありましたが、後に法光寺境内に移されました。移転前には、堂前で大名が落馬したという故事から「すべり地蔵」とも呼ばれ、足腰を守る地蔵として信仰を集めています。

文化財

法光寺には、大津市指定文化財が2件あります。

木造男神・女神坐像 2躯：境内の鎮守社である天神社の神体で、応永3年（1396年）に那波加神社の木を用いて作られました。銘文から男神像が天神像であることがわかりますが、女神像の神名は不明です。天神が男女一対というのは不自然であり、元は那波加神社の神体として作られたとする説もあります。
紙本著色法光寺境内絵図：江戸時代に描かれたもので、延享3年の再興時の寺境内が描かれています。五重塔や釈迦堂、大堂など、現在では失われた堂宇を見ることができます。

現地情報

所在地：滋賀県大津市苗鹿2-7-11
交通アクセス：
鉄道：JR西日本湖西線 おごと温泉駅または比叡山坂本駅下車、徒歩約15分
バス：京阪石山坂本線・京津線びわ湖浜大津駅から、江若バス（堅田駅行き）で「苗鹿」バス停下車、徒歩約7分

周辺情報

* 那波加神社

法光寺は、静かな山里に佇む歴史ある寺院です。ぜひ一度訪れて、その豊かな歴史と文化に触れてみてください。

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