法禅寺 (中津川市)

法禅寺（ほうぜんじ）

岐阜県中津川市加子母に位置する曹洞宗の寺院、法禅寺は、大慈山と号します。この寺院は、過去に真言宗の寺院であった極楽寺を前身としており、その歴史は古く、多くの変遷を経て現在に至っています。

歴史

法禅寺は、もともと飛騨国益田郡御厩野にあった大威徳寺の末寺、極楽寺という真言宗の寺院でした。しかし、天正13年（1585年）の天正地震により大威徳寺が壊滅し、極楽寺も衰退の一途をたどりました。その後、寛文3年（1663年）に清厳良淳が加子母村に福田寺を開基し、その師である善中春良を開山として迎えました。後に、庵主からの招請により、清厳良淳は極楽寺の跡地が最適と考え、福田寺を現在地に移転し、寺号を萬燈山 法禅寺と改めました。

享保10年（1725年）には、火災により本堂をはじめとする多くの建物や什物、過去帳などが焼失するという災難に見舞われましたが、三世道密逸志と四世百霊智満の尽力により、檀信徒の協力も得て復興を果たしました。その後も六世悦峯恵禅の代に須弥壇と開山堂が再建され、過去帳も再編されました。七世禅縫虎観の時代には、過去帳が全面的に書き改められ、寺の由緒も記録されました。しかし、明治初期までの記録は乏しく、寺は荒廃していたと伝えられています。

中興の祖：十三世機外覚道

明治12年（1879年）に十三世住職となった機外覚道は、衰退していた寺を復興させるために尽力しました。彼は、坊舎の改築、寺有地の整備、植林、財産の蓄積を行い、寺院の安定に大きく貢献しました。また、山門の改築や大梵鐘の鋳造も行い、寺の興隆に努めました。彼の功績を称え、人々は彼を中興の祖と呼びました。

十四世大機活道

機外覚道の第一徒弟である大機活道は、明治41年（1908年）に十四世住職となり、本堂の屋根の葺き替え、高塀の築造、念仏講や和讃講の普及に努め、寺の整備と信仰心の向上に尽力しました。

十五世大法隆道

大法隆道は、駒沢大学を卒業後、永平寺で修行を積み、昭和22年（1947年）に十五世住職となりました。彼は、晋山式や大受戒会を執行し、大梵鐘の鋳造、本堂の増築、薬師閣の移転、弁天堂の改築、放生池の開堀、参道の拡幅など、寺院の整備に尽力しました。また、開創三百年記念事業として、位牌堂の新築や本堂内陣の改造も行いました。

薬師如来像

法禅寺には、奈良時代の高僧である泰澄の作と伝えられる薬師如来像があります。この像は、もともと木曽越の薬師堂に祀られていましたが、洪水や暴風により破損したため、藤山の庚申堂を経て、現在は薬申閣に安置されています。修復時に、右手は阿弥陀如来の手の形になってしまっており、左手にあったはずの薬壺も失われています。

十二神将像

薬師如来像の左右には、本来十二神将像があるはずですが、現在は一体しか残っていません。残っている像も、金箔が僅かに残るのみです。

梵鐘

法禅寺の梵鐘は、寛文5年（1665年）に最初に鋳造されましたが、明治31年（1898年）に新梵鐘が鋳造されたため、古梵鐘は小郷の地蔵堂に移されました。太平洋戦争中に両方の梵鐘とも供出されましたが、古梵鐘は名古屋に残っていたため、寺に戻すことができました。その後、昭和26年（1951年）に新たに梵鐘が鋳造され、古梵鐘は再び地蔵堂に戻されました。

寺宝

法禅寺には、以下の寺宝が伝えられています。

摩利支天画像：室町時代の画僧、吉山明兆（兆殿司）の筆と伝えられる。
木像薬師如来坐像：薬申閣に安置されている。泰澄の作と伝えられるが、詳細は不明。
大蔵経 全六百巻：享保年間に内木彦七が寄付した。
華厳経 一部 四十一巻：中国書版本。


法禅寺は、その長い歴史の中で、多くの困難を乗り越え、地域の人々の信仰に支えられながら、現在の姿を保っています。その歴史と寺宝は、訪れる人々に深い感動を与えることでしょう。

もう一度検索