法蔵部

法蔵部についての詳細

法蔵部（ほうぞうぶ）は、仏教の上座部の一派であり、主に中央アジアと中国でその影響を強く持っていました。この部派は一般に説一切有部や化地部から分派したと考えられていますが、その成立に関しては諸説あります。法蔵部は、東アジアにおける仏教の伝播において重要な役割を果たし、律宗の基本的な教義や伝統を形成しました。

法蔵部の教義

法蔵部の教義の特徴の一つは、ガウタマ・ブッダの教えが阿羅漢の教えよりも優れていると考える点にあります。法蔵部の信者は、ブッダを特別視し、彼をサンガ（僧団）と区別しています。また、卒塔婆に対する帰依の重要性も強調されます。仏教の伝説にあるジャータカでは、卒塔婆がブッダの前世を表現する方法として描かれており、これが法蔵部における菩薩道と声聞道の明確な区別に寄与しています。

大乗仏教との関係

法蔵部は、三蔵に加えて菩薩蔵（Bodhisattva Piṭaka）と呪蔵（Mantra PiṭakaまたはDhāraṇī Piṭaka）の二つの蔵を持ち、五蔵と呼ばれています。法蔵部は、5世紀の僧侶である仏陀耶舎が四分律を漢訳した際、大乗仏教の経典を受け入れたとされています。このような背景から、法蔵部は直接的に大乗仏教と深い関係を持つとされ、特にインドのウッジャイン出身の僧侶真諦によっても肯定されています。

法蔵部の成長は、特にカニシカ王の統治時代に顕著です。クシャナ朝のカニシカ王のもとで、般若経の教義が確立され、500人のボーディ・サットヴァが会議に参加した記録もあります。これにより、大乗仏教がインド北西部で制度的に強固な地位を得ることに寄与しましたが、般若経の起源は大乗仏教にはなく、むしろ大衆部に関連しているという見解もあります。

東アジアへの広がり

法蔵部は、イランや中央アジア、中国といった地域での仏教の拡がりに大きく貢献しました。そのため、これらの地域において仏教を受け入れた国々は、法蔵部の律や規則を採用することが一般的でした。現存する律は、法蔵部の伝統を引き継いでいることが、この事実を裏付けています。実際、南伝仏教やチベット・モンゴルでの律とは異なる形で、法蔵部の律が現在も台湾、中国、ベトナム、朝鮮において重要な役割を果たしています。

法蔵部の衰退と影響

法蔵部は、初期の成功がガンダーラ地域のインド・スキタイ人との関係に依存していたと考えられています。しかし、クシャーナ朝の衰退と共に、その影響力が薄れたとされています。法蔵部の律は5世紀初期に漢訳され、以降中国の出家者の間で広まりましたが、7世紀にはインドや中央アジアでほぼ消滅したという記録もあります。特に玄奘が旅をした際には、法蔵部の存在は記録に残っていません。

今日でも法蔵部の影響は、台湾や中国、ベトナム、朝鮮などの国々で確認できます。特に比丘尼への戒律の授与が続いており、法蔵部の律は四分律と呼ばれる形で存続しています。法蔵部は、仏教発展の中で重要な位置を占めていたことが、これらの継続的な伝統からも明らかです。

もう一度検索