洋風画

洋風画とは

洋風画とは、日本において西洋の絵画技法が導入された初期段階の絵画を指します。具体的には、油絵具などの西洋画材が本格的に輸入される以前に、宣教師から技術を学んだり、西洋の絵画を見様見真似で描かれたものを指します。

特徴としては、線描、陰影法、遠近法といった西洋画の技法が用いられているものの、絵具は日本画で使用されるものが使われている点が挙げられます。そのため、西洋画風の表現でありながら、どこか日本的な風合いを持つ独特な絵画様式を形成しています。

洋風画の歴史

洋風画は、その成立と発展の過程において、大きく三つの時期に分けられます。

第一期：南蛮系宗教画

洋風画の第一期は、南蛮（スペイン、ポルトガル）系の宗教画に始まります。1543年にポルトガル人が種子島に漂着したことを契機に、ザビエルをはじめとするキリスト教宣教師が来日し、布教活動を開始しました。

1580年には安土（現在の滋賀県近江八幡市安土町）と有馬（現在の長崎県南島原市）、臼杵（現在の大分県臼杵市）、1581年には府内（現在の大分県大分市）などに、布教活動のための教育機関であるセミナリヨやコレジオなどが設立されました。これらの教育機関では、西洋画の技法が教えられ、日本の画家たちに影響を与えました。この時期に活躍した作家としては、信方、山田右衛門作、生島三郎左衛門などが知られています。

第二期：長崎派（長崎蘭画）

第二期は、長崎派（長崎蘭画）と呼ばれる時期です。当時、日本は鎖国政策を敷いていましたが、長崎は幕府の直轄地として、幕府の管理下で貿易（長崎貿易）が行われていました。そのため、オランダから多くの書籍が日本に入ってきました。これらの書籍に掲載されていた銅版画の挿絵が、日本の画家たちにとって西洋画のヒントとなり、長崎を中心に洋風画が盛んになりました。

寛文（1661年）頃には喜多元規、明和（1764年）以降には若杉五十八、荒木如元、平賀源内などの作家が活躍しました。この時期の洋風画は、より写実的で、西洋の絵画表現を取り入れた作品が多く見られます。

第三期：秋田蘭画

第三期は、秋田蘭画と呼ばれる時期です。1773年、出羽国久保田藩の8代目藩主である佐竹曙山が、藩財政を立て直すため、平賀源内を招き、院内や阿仁の鉱山の技術指導を依頼したことがきっかけです。

源内が角館（現在の秋田県仙北市角館町）を訪れた際、小田野直武に西洋絵画の技法を教えました。その後、江戸に留学した直武は、帰藩後、洋画指導者として藩主の佐竹曙山や角館城代の佐竹義躬に洋画の技法を指導しました。秋田蘭画は、それまでの洋風画の伝統を受け継ぎつつ、さらに洗練された表現を追求しました。

まとめ

洋風画は、西洋の絵画技法が日本に伝わる過程で生まれた、独自の絵画様式です。南蛮系宗教画から始まり、長崎派、秋田蘭画へと発展していく中で、日本の画家たちは西洋の表現を取り入れながら、独自の感性を反映させた作品を制作しました。その歴史を辿ることで、日本の美術史における西洋文化の受容と、その変容の過程を垣間見ることができます。

もう一度検索