若杉五十八

若杉五十八（わかすぎ いそはち）は、宝暦9年（1759年）に生まれ、文化2年（1805年）に没した、江戸時代後期の長崎を代表する洋風画家です。彼は、同じく長崎で活躍した洋画家である荒木如元とともに、「長崎二大洋画家」と称されています。

生涯

若杉五十八は、盲目の鍼医である若杉左斎と、久留米藩御用達の井上清右衛門の妹を母として生まれました。若杉家は代々、長崎奉行のもとで地役人を務める家柄でした。明和7年（1770年）、従兄の若杉敬十郎が病死したため、その養子となり家督を継ぎました。翌年には、長崎会所請払役並に就任しています。安永8年（1779年）に請払役を辞任した後、天明7年（1787年）には敬十郎の実子である登市に家督を譲りました。その後十数年間は役職に就いていませんでしたが、寛政4年（1792年）頃に元同僚の久米豊三郎の娘婿となり、会所請払役見習として復帰を果たしました。その後、久米弥十郎と改名し、寛政6年（1794年）には養父である豊三郎の引退に伴い、会所請払役に昇進。その職を亡くなるまで務めました。戒名は卓然院祚卿日任居士。墓所は本蓮寺にありましたが、現在は取り払われ、墓は残っていません。

西洋画法研究

若杉五十八がどのように西洋画法を学んだのかは、詳しい経緯は不明です。しかし、彼は江戸時代においても特に優れた油彩画を残しており、最初に請払役を務めていた時期にその才能を見出され、オランダ人から直接指導を受けていた可能性が高いと考えられています。

彼の作品は、かつてはJ.E.リーディンガーの銅版画集『王侯の素晴らしき喜びと気高き狩猟の描写』を元に制作されたとされていましたが、近年の研究では、実際には同著者の『狩猟家と鷹匠』を原図としていることが判明しました。また、顔料の科学的分析によって、彼の作品には舶来顔料であるプルシアンブルーが大量に使われていることが明らかになっています。

住友家との関係

現存する若杉五十八の作品のうち、約半数の6点が住友家に伝来しています。このことから、五十八が銅の輸出や外国製品の輸入に携わっていた住友家と特別な関係にあったことが伺えます。

現存作品

若杉五十八の作品は、その卓越した技術と西洋画法への深い理解を示すものとして、美術史的に高く評価されています。

参考資料

• - 勝盛典子 「若杉五十八研究」『近世異国趣味美術の史的研究』 臨川書店、2011年3月30日、pp.249-290、ISBN 978-4-653-04039-2

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