荒木如元

荒木如元（あらき じょげん）は、明和2年（1765年）に生まれ、文政7年（1824年）に没した江戸時代末期の長崎派の画家です。本姓は一ノ瀬氏で、名は直忠、通称は善十郎のちに善四郎と称しました。如元は号です。

生涯

如元は、一ノ瀬氏の家に生まれましたが、後に荒木元融の養子となり荒木姓に改めました。絵画は養父の元融に師事し、兄養子の融思からはガラス絵の技術を熱心に学んだとされています。分限帳によると、天明元年（1781年）から同7年（1787年）の間、融思が石崎家の家督を継ぐことになったため、急遽荒木家の3代当主として唐絵目利職を引き継ぎました。この時期、如元は本格的な洋画制作に専念したと伝えられています。

しかし、寛政3年（1791年）までに、理由は不明ながら荒木家の家督を後継に譲り、一ノ瀬姓に復しました。その後、町絵師として洋画制作に励み、長崎版画の下絵やガラスへの絵付けなどで生計を立てました。蹄斎北馬が描いた狂歌摺物「紅毛男女額絵」には、如元によるガラス絵が描かれており、彼の作品が江戸にまで知られていたことがわかります。如元は今紺屋町で没し、享年60歳でした。墓所は海雲山晧台寺後山にあり、法名は安山了養信士です。

作品

如元の作品は、油彩、ガラス絵、版画の下絵など多岐にわたります。以下に主な作品を挙げます。

「唐蘭船持渡鳥獣図」（慶應義塾図書館所蔵）：紙本著色で、5帖225図からなる作品。天明7年（1787年）頃の作。
「吉雄耕牛像」（名古屋市博物館所蔵）：絹本著色で、寛政12年（1800年）頃の作。
「異国海港の図」（京都大学史学教室寄託、現在所在不明）：文化2年（1805年）頃以降の作。
「瀕海都城図」（神戸市立博物館所蔵）：布地油彩で、1805年の作。
「オランダ海港図」（大和文華館所蔵）：布地油彩。
「蘭人鷹狩図」（長崎歴史文化博物館所蔵）：布地油彩。
「和蘭人男女逍遥図」（浜松市美術館所蔵）：ガラス絵、1面。

また、挿絵画家としても活躍し、清中叔親の『めざまし草』（文化12年、1815年）や、大槻玄沢の『蘭畹摘芽』（文化14年、1817年）などの書籍に挿絵を提供しました。

評価

荒木如元は、若杉五十八とともに長崎二大洋画家と称され、長崎における洋風画の普及に大きく貢献しました。彼の作品は、当時の長崎の国際色豊かな文化を反映しており、異国情緒あふれる風景や人物を精緻に描いています。また、ガラス絵という珍しい技法を使いこなし、独自の画風を確立しました。彼の作品は、現在でも多くの美術愛好家や研究者から高い評価を受けています。

関連文献

如元に関する文献として、以下のようなものが挙げられます。

『崎陽画家略伝』
渡辺秀実『長崎画人伝』
『瓊浦画工伝』（文化元年 春孔撰、文化10年 今井孝寛増訂）

これらの文献は、如元の生涯や作品についてより深く知るための貴重な資料となっています。

出典

陰里鐵郎 『日本の美術329 川原慶賀と長崎派』 至文堂、1993年
阿野露団 『長崎の肖像 長崎派の美術家列伝』 形文社、1995年
『神戸市立博物館所蔵名品展　南蛮美術と洋風画』展図録 茨城県立歴史館、1995年
勝盛典子 『近世異国趣味美術の史的研究』 臨川書店、2011年

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