洲宮神社

洲宮神社

洲宮神社（すのみやじんじゃ）は、千葉県館山市洲宮に位置する神社です。古くからこの地に鎮座し、式内社（大社）の論社として知られています。旧社格は県社でした。

祭神

洲宮神社では、以下の三柱の神様が祀られています。

主祭神
天比理乃咩命（あまのひりのめのみこと）:
安房神社の后神であり、「洲ノ神（すさきのかみ）」とも呼ばれていました。延喜式神名帳では「天比理乃咩命」と記されていますが、六国史では「天比理刀咩命」（あめのひりとめのみこと）と表記されており、この違いについては神名帳の誤記とする説があります。
相殿神
天鈿女命（あめのうずめのみこと）:
天富命（あめのとみのみこと）:
阿波忌部を率いて安房を開拓したとされる神様です。

また、洲宮神社と洲崎神社は、かつて「洲の神」を祀る一体の神社であったという説も存在します。この説によれば、洲崎神社が一宮、洲宮神社が二宮とされていました。ただし、安房国二宮としての確実な史料は見つかっていません。しかし、鶴谷八幡宮への神輿渡御では「安房二ノ宮洲宮神社」の高張りを掲げ、安房神社の次順で斎場に入御するという慣例があります。

歴史

概史

神社の社伝によれば、神武天皇元年に天富命が魚尾山に神社を創建し、当時海辺にあったことから「洲神」や「洲宮」と呼ばれたとされています。この記述は、大同2年（807年）に成立した『古語拾遺』に記されている、天富命が阿波国から房総半島へ渡来したという記述を補強するものです。

「天比理刀咩神」は、六国史に度々登場し、神階の昇叙を受けています。延長5年（927年）の『延喜式』神名帳には、安房国安房郡に「后神天比理乃咩命神社 大 元名洲神」と記載されており、大社に列格されました。洲宮神社は、この天比理乃咩命神社の論社の一つであり、もう一つの論社である洲崎神社との間で、どちらが式内社であるかについて、江戸時代から争いが続いてきました。

『洲崎神社伝記』によれば、洲宮神社は当初明神山の洲の辺に鎮座していましたが、後に魚尾山へ遷座しました。その後、文永10年（1273年）10月15日の火災で社殿を焼失し、長らく仮宮に鎮座していましたが、永享11年（1439年）10月に現在の地へ遷座しました。ただし、現在の地からも祭祀に使われた鏡や土器が出土しており、古代からこの地で祭祀が行われていたことがわかります。

后神天比理乃咩命神社を巡る論争は、明治時代に決着をみることになります。明治5年（1872年）、神祇を管轄する教部省は洲宮神社を式内社としましたが、翌年、この決定を覆し、洲崎神社を式内社としました。この決定の根拠は明確でなく、洲宮神社側は、文永10年の火災によって古記録を失ったことが、式内社指定変更の原因の一つであると主張しています。近代社格制度では、洲宮神社は県社に列格されました。

神階

神階については、「洲崎神社#神階」を参照してください。

境内

境内には、歴史を感じさせる建造物や、静かで落ち着いた雰囲気が漂っています。

文化財

洲宮神社には、以下の貴重な文化財が所蔵されています。

館山市指定文化財

有形文化財

木造天部像
南北朝期から室町時代前期の作とされ、神仏習合時代の四天王または二天王のうちの一体、もしくは毘沙門天像と考えられています。昭和44年2月21日に指定されました。
洲宮神社縁起
洲宮神社の縁起を記した文書で、『古語拾遺』からの引用が見られることから、平安時代以降に成立したとされています。本文の約3分の1は、失われた『安房国風土記』の一部と推定されています。昭和44年2月21日に指定されました。
祭祀用土製模造品
古墳時代後期の祭具で、旧社地とされる魚尾山から出土しました。昭和44年2月21日に指定されました。

無形民俗文化財

洲宮神社御田植神事
毎年元日の朝に行われる、豊作を祈願する予祝儀礼です。昭和44年2月21日に指定されました。

現地情報

所在地：千葉県館山市洲宮921
交通アクセス：
館山駅（JR内房線）から、JRバス（神戸経由・安房白浜行き）で「洲の宮」バス停下車、徒歩2分。

脚注

[参照元リスト]

参考文献

全国神社名鑑刊行会史学センター 編　『全国神社名鑑　上巻』　全国神社名鑑刊行会史学センター　1977年7月
君塚文雄「洲崎神社・洲宮神社」（谷川健一 編 『日本の神々 -神社と聖地- 11 関東』 （白水社、1984年12月））
中世諸国一宮制研究会 編　『中世諸国一宮制の基礎的研究』　㈲岩田書院　2000年2月

外部リンク

洲宮神社 - 館山市観光協会
* 后神天比理乃咩命神社 - 國學院大學21世紀COEプログラム「神道・神社史料集成」

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