海住山寺

海住山寺（かいじゅうせんじ）

海住山寺は、京都府木津川市加茂町に位置する真言宗智山派の寺院です。補陀洛山（ふだらくさん）という山号を持ち、本尊は十一面観音です。かつて恭仁京があった瓶原を見下ろす三上山（海住山）の中腹に位置し、奈良時代の創建と伝えられ、鎌倉時代に貞慶によって中興されました。特に国宝の五重塔は有名で、仏塔古寺十八尊第3番札所となっています。

歴史

寺伝によれば、海住山寺は天平7年（735年）に聖武天皇の勅願により、良弁によって藤尾山観音寺として創建されました。聖武天皇は、平城京の鬼門にあたるこの地に伽藍を建立すれば、東大寺大仏の造立が成就するという夢告を受け、良弁に命じて寺を建立させたと伝えられています。良弁が感得した十一面観音像を本尊としたのが、海住山寺の前身である観音寺です。

しかし、保延3年（1137年）に全山が焼失し、70年余りの間再建されませんでした。海住山寺の歴史が史実として確認できるのは鎌倉時代の13世紀以降ですが、現存する本尊の十一面観音像は10世紀頃の作と見られ、その頃には既に寺院が存在していた可能性があります。

承元2年（1208年）11月、貞慶によって中興され、観音寺から補陀洛山海住山寺に改称されました。貞慶は解脱上人とも呼ばれ、当時勢力を増していた浄土宗を批判し、戒律の復興に努めました。貞慶は興福寺に属していましたが、南都仏教の堕落を憂い、建久3年（1192年）に笠置寺に移り、その後海住山寺に移り住み、建暦3年（1213年）に59歳で没するまでの晩年をこの地で過ごしました。

海住山寺という寺号は、観音の衆生を救済しようとする誓願が海のように広大であること、そして観音の住処がインドの補陀洛山にあることに由来するとされています。

貞慶の没後、弟子の覚真が後を継ぎました。覚真は貴族出身で、参議にまで上り詰めた人物でしたが、41歳で出家し貞慶の弟子となりました。海住山寺の記録によると、貞慶の一周忌にあたる建保2年（1224年）に、覚真が仏舎利七粒を塔に安置したとあり、これが現存する五重塔の完成を意味すると考えられています。

室町時代には塔頭が58ヶ坊もありましたが、豊臣秀吉の太閤検地によって衰退しました。近世まで興福寺の末寺でしたが、明治以降は真言宗智山派に転じました。

境内

境内は山の中腹に位置し、東を正面としています。山門を入り、正面には本堂、右手前に文殊堂、左手には国宝の五重塔が建っています。

本堂: 明治17年（1884年）に再建されたもので、京都府暫定登録有形文化財に指定されています。
五重塔: 鎌倉時代の建保2年（1214年）に建立された国宝。高さは17.7メートルで、初重の一辺は2.74メートル。初層の屋根の下に裳階（もこし）と呼ばれる庇があるのが特徴で、裳階を持つ五重塔としては法隆寺五重塔の例がありますが、現存する平安・鎌倉時代の五重塔では海住山寺の塔のみです。
文殊堂: 正和元年（1312年）建立の重要文化財。

その他、境内には三社明神、天満宮、春日社、稲荷社、薬師堂、納骨堂、本坊、庫裏、奥書院、庭園などがあります。

文化財

海住山寺には、以下の文化財があります。

国宝: 五重塔
重要文化財: 文殊堂、木造十一面観音立像（本堂安置、奥の院像）、木造四天王立像、絹本著色法華経曼荼羅図、海住山寺文書
京都府指定有形文化財: 絹本著色釈迦三尊十六羅漢図、絹本著色春日宮曼荼羅十六善神図、梵鐘、木造扁額「海住山寺」、楼門扁額、本堂扁額、金銅能作性塔・木造彩色宝珠台
木津川市指定有形文化財: 紙本著色海住山寺縁起絵巻
京都府暫定登録有形文化財: 本堂、鐘楼、春日社、天満宮、稲荷社、中門、山門、絹本著色地蔵十王図、板絵著色十一面観音来迎図、板絵著色補陀落山浄土図、絹本著色阿弥陀浄土図、絹本著色大威徳明王像、絹本著色十六羅漢図、絹本著色愛染明王像、絹本著色釈迦如来像、絹本著色文殊菩薩像、絹本著色普賢菩薩像、絹本著色蓮華化生図、海住山寺文書、大般若経、般若心経、紙本金地著色西王母献桃図・紙本金地著色明皇楊貴、紙本金地著色明皇撃梧桐図襖、紙本墨画淡彩西湖図

利用情報

開門時間: 9時 - 16時30分
入山料: 山内無料、本堂・本坊拝観300円
所在地: 〒619-1106 京都府木津川市加茂町例幣海住山境外20

交通アクセス

JR加茂駅から奈良交通バスで「岡崎」下車、徒歩40分
* 木津川市コミュニティバス「海住山寺口」下車徒歩25分（土日祝日運休）

バスの本数が少なく、下車後も坂道を長時間歩く必要があるため、自家用車またはタクシーの利用が推奨されます。

もう一度検索