海北友雪

海北友雪（かいほう ゆうせつ）は、慶長3年（1598年）に生まれ、延宝5年（1677年）に没した江戸時代初期の絵師です。父は安土桃山時代を代表する絵師の一人である海北友松。名は道暉（みちはる）、友雪は号です。

略歴

友雪は友松が66歳という晩年に生まれた子とされていますが、その出生には養子の可能性も指摘されています。幼い頃から父・友松から画技を学んだとされ、その影響は友雪の作品の細部描写に色濃く見られます。18歳で父を亡くした後、海北友雪として画史に登場する以前は、「小谷」または「絵屋」忠左衛門と名乗り、絵屋を営んで生計を立てていました。これは、友松が狩野派のような強固な絵師集団を形成していなかったことが背景にあります。この時期の作品は絵馬が中心ですが、史料からは絵屋として多種多様な絵を手がけていたことが確認できます。現存する作品としては、山水画、大和絵、武者絵、寺社縁起などが挙げられます。

絵屋忠左衛門としての活動に転機が訪れたのは、春日局の推挙によって徳川家光に召し出され、その御用を仰せ付けられたことでした。春日局の父である斎藤利三が山崎の戦いで敗死した際、友松が利三の一家を厚く庇護したことがあり、春日局はその恩義に報いようとしたとされています。召し出された時期は正確には分かっていませんが、寛永年間中期頃と推測され、江戸に屋敷を与えられ、その頃から友雪と名乗るようになりました。当時の流行に合わせて狩野派に接近し、春日局が開基した妙心寺塔頭麟祥院の「雲竜図」「西湖図」などの襖絵には、その影響が強く表れています。その後、狩野探幽に従い、明暦・寛文・延宝期の内裏障壁画制作に、狩野派以外では異例の毎回参加を果たしました。また、後水尾上皇をはじめとする宮廷からの依頼も多く、60代に入って間もなく法橋に叙せられました。

80歳で亡くなり、法名は覚翁友雪斎道暉居士。墓所は京都の十念寺にあります。長子が僧侶になっていたため、海北友竹が跡を継ぎました。以後、海北家は明治時代まで友雪-友竹-友泉-友馬-友三-友徳-友樵-友真と続き、京都で禁裏などの御用を務める家として存続しました。弟子には海北友賢がいます。

代表作

職人尽図屏風
日吉山王祭礼図屏風
龍虎図屏風
雲竜図（妙心寺塔頭麟祥院）
西湖図（妙心寺塔頭麟祥院）

参考文献

『協和企画25周年記念特別出版 海北友雪 職人尽図 限定版』 協和企画、1983年1月20日（非売品）
武田恒夫 『日本の美術324 海北友松』 至文堂、1993年 ISBN 978-4-784-33324-0
実方葉子 「《日吉山王祭礼図屏風》を読む ─海北友雪の創意と戦略─」『泉屋博古館紀要』第16巻、1999年9月30日、pp.103-130
河合正朝 「海北友雪と新出の龍虎図屏風」『国華』第109編第9冊通巻1419号、2014年1月
上野友愛 佐々木康之 内田洸（サントリー美術館）編集 『徒然草 美術で楽しむ古典文学』 サントリー美術館、2014年6月

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