海里 (列車)

海里（かいり）

「海里」は、東日本旅客鉄道（JR東日本）が新潟駅と酒田駅の間を白新線および羽越本線を経由して運行する、特別な臨時快速列車です。この列車は「新潟・庄内の食と景観を楽しむ」というコンセプトのもと、特に車内での食事サービスに力を入れた観光列車として企画・運行されています。

運行背景と位置づけ

かつて同じ区間では、2001年から臨時快速列車「きらきらうえつ」が活躍していました。しかし、車両の老朽化に伴い「きらきらうえつ」は引退し、羽越本線エリアにおけるJR東日本の「のってたのしい列車」としての役割は、2019年に登場した「海里」へと引き継がれました。地域の魅力を発信する列車として、その期待が寄せられています。

運行形態

主に週末を中心に設定されており、新潟発の下り列車が午前中に、酒田発の上り列車が午後にそれぞれ1日1往復運行されています。運転には「通常ダイヤ」と「冬ダイヤ」の二種類が存在します。冬季に適用される冬ダイヤでは、後述する景観を楽しむためのサービス（減速運転や長時間停車）が省略されるため、全体の所要時間が短縮されます。この場合でも、新潟駅の発着時刻は通常ダイヤに合わせられることが多く、酒田駅には早く到着し、出発時刻まで停車するといった運用が行われることがあります。また、時期によっては片道のみが冬ダイヤ相当の時刻で運転されるケースもあります。

特に、通常ダイヤでは、笹川流れの息をのむような海岸美を存分に堪能できるよう、桑川駅と越後寒川駅の間で速度を落として運転します。さらに、桑川駅では上下列車ともに20分から30分程度の長時間停車が設けられており、乗客が列車を降りて休憩したり、駅周辺を散策したりする時間が提供されています。年に数回、酒田駅より先の秋田駅まで区間を延長して運転されることもあります。

停車駅

海里の定期停車駅は以下の通りです。

新潟駅 - 新発田駅 - 中条駅 - 坂町駅 - 村上駅 - 桑川駅 - あつみ温泉駅 - 鶴岡駅 - 余目駅 - 酒田駅

秋田駅への延長運転時には、上記の酒田駅の先に以下の駅にも停車します。

酒田駅 - 遊佐駅 - 象潟駅 - 仁賀保駅 - 羽後本荘駅 - 秋田駅

特徴的な車内サービス

この列車の大きな特徴の一つは、こだわりの食事サービスです。びゅう旅行商品として販売される4号車では、新潟県と庄内地方の著名な料亭やレストランが監修した特別メニューが提供されます。これらの料理は、新潟県燕市の老舗洋食器メーカーが手掛けた「海里」オリジナルの食器で供され、目でも舌でも地域の魅力を味わえます。通常の指定席として乗車可能な1号車や2号車の乗客も、3号車に設置された売店で「海里」特製の弁当などを購入して楽しむことができます。提供されるメニューは、下り列車と上り列車、そして季節ごとに異なるように工夫されており、利用するたびに新しい発見があります。

沿革

「海里」は、2019年10月5日に初めて運行を開始しました。その後、2020年には新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一時的に運休となりましたが、同年8月1日には運転を再開しています。車内サービス向上の一環として、2020年9月10日にはWi-Fi設備が設置されました。運行開始後も様々な取り組みが行われており、2021年には秋田駅までの延長運転が複数回実施されました。2022年には、新潟県で開催された「越後妻有 大地の芸術祭」に合わせた臨時列車「妻有海里」の運行や、新潟駅と青森駅を結ぶ団体専用列車「夜想（ノクターン）海里」の運行計画（一部運休や再設定あり）など、多様な形で活用されています。

地域に根ざした「食」と「景観」を同時に楽しめる観光列車として、「海里」は羽越本線沿線の新たな魅力を発信し続けています。

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