涼茂

涼茂（りょう ぼう）は、後漢末期から三国時代の魏にかけて活躍した政治家であり、字（あざな）は伯方（はくほう）と称しました。兗州山陽郡昌邑県（えんしゅうさんようぐんしょうゆうけん）の出身で、曹操（そうそう）に仕え、その才能を発揮しました。

若年の頃から学問を好み、議論においては常に経典を根拠として主張を展開しました。その学識と才能が認められ、曹操に招聘（しょうへい）されて司空掾（しくうえん）に任じられ、高第（こうてい）として推挙された後、侍御史（じぎょし）に補任されました。当時、泰山郡（たいざんぐん）では盗賊が横行していましたが、涼茂が太守（たいしゅ）として赴任すると、わずか10ヶ月の間に千家を超える人々が移住してくるほど治安が回復しました。

その後、楽浪太守（らくろうたいしゅ）に転任することになりましたが、赴任の途上で遼東（りょうとう）の公孫度（こうそんど）に拘留されてしまいます。しかし、涼茂は公孫度に屈することなく、毅然とした態度を貫きました。曹操が鄴（ぎょう）を留守にしていた際、公孫度がその隙を突いて攻撃しようと企てましたが、涼茂は「曹公（曹操）は国家の危機を憂い、人民の苦しみを哀れみ、天下のために義兵を率いて残賊を討伐している。その功績は高く、徳は広く、比類なき人物である」「将軍（公孫度）は挙兵して西へ向かおうとしているが、それは滅亡を招く行為である」と諫めました。公孫度はこの諫言を受け入れ、挙兵を中止したと言われています。

召還後、魏郡太守（ぎぐんたいしゅ）や甘陵国相（かんりょうこくしょう）を歴任し、いずれの地でも優れた治績を挙げました。曹丕（そうひ）が五官中郎将（ごかんちゅうろうしょう）となると、涼茂はその長史（ちょうさ）となり、後に左軍師（さぐんし）に移りました。建安18年（213年）に魏（ぎ）が建国されると、尚書僕射（しょうしょぼくや）に任じられ、その後、中尉（ちゅうい）・奉常（ほうじょう）と官位を移りました。曹丕が東宮（とうぐう）に入ると太子太傅（たいしふ）となり、太子少傅（たいししょうふ）の何夔（かき）らと共に、太子や諸侯の官属を選抜する任にあたりました。

没年は不明ですが、在官中に亡くなったとされています。延康元年（220年）3月には、曹丕が涼茂らの早逝と子孫の衰微を憂い、彼らの息子を郎中（ろうちゅう）に任じるよう布令を出しました。このことから、涼茂の功績と人柄が曹丕に高く評価されていたことがうかがえます。

小説『三国志演義』には登場しませんが、正史『三国志』にその名が記されており、後漢末から三国時代にかけて活躍した政治家として、その足跡を知ることができます。

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