清閑寺家

清閑寺家：由緒ある公家から華族へ

清閑寺家（せいかんじけ）は、藤原北家勧修寺流を祖とする名門公家であり、華族制度成立後は伯爵家として栄えました。その歴史は南北朝時代まで遡り、権大納言吉田経長の五男、資房を家祖として創立されました。

室町時代から戦国時代にかけては家系が途絶えましたが、江戸時代初期、慶長年間（1600年頃）に再興を果たします。この再興劇には、前関白二条昭実の関与があったと伝えられています。諸説ありますが、『嘉良喜随筆』の記述によると、再興の祖である共房は実は二条昭実の子であり、様々な事情から清閑寺家の再興という形で別家を立てられたとされています。

再興後、清閑寺家は隆盛を極め、初代当主共房は従一位内大臣にまで昇進。その後も、多くの当主が権大納言や大納言といった要職に就き、従一位に叙せられる者も少なくありませんでした。

特に、江戸時代前期から中期にかけて当主を務めた権大納言清閑寺熙定は、有名な忠臣蔵事件と関わりがあります。元禄14年、勅使饗応役を務めていた浅野長矩（赤穂藩主）が吉良義央に刃傷に及んだ事件ですが、熙定は霊元上皇の院使として江戸城に滞在しており、この事件に関する多くの記録に登場します。ただし、熙定の饗応役は浅野ではなく伊達宗春であったという点に注意が必要です。

江戸時代の清閑寺家の家禄は180石とされていました。明治維新後、公家と大名家が統合されて華族制度が誕生すると、清閑寺家も華族に列せられました。明治3年には家禄が291石3斗と定められ、明治9年には金禄公債が支給されています。

明治17年、華族令の施行により華族の爵位が五爵制になると、清閑寺家は旧堂上家としての格式を認められ、盛房が伯爵に叙爵されました。その後、2代伯経房、3代伯良貞も貴族院の伯爵議員を務め、良貞は宮内省で主猟官や式部官として活躍しました。

清閑寺家の邸宅は、昭和前期には東京市中野区宮園通にありました。

このように、清閑寺家は南北朝時代から明治時代にかけて、公家として、そして華族として日本の歴史に名を刻んだ家系と言えるでしょう。その栄枯盛衰、そして忠臣蔵にまつわるエピソードは、日本の歴史を語る上で重要な一端を担っています。 現在では、その歴史と伝統は、多くの文献や記録の中に受け継がれています。

参考文献

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』
石川健次郎「明治前期における華族の銀行投資―第15国立銀行の場合―」
内海定治郎『真説赤穂義士録』
刑部芳則『京都に残った公家たち: 華族の近代』
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』
霞会館華族家系大成編輯委員会『昭和新修華族家系大成 別巻 華族制度資料集』
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧華族家系大成 上巻』
華族大鑑刊行会『華族大鑑』
* 橋本政宣『公家事典』

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