渟足柵

渟足柵（ぬたりのき/ぬたりのさく）

渟足柵は、古代日本における重要な城柵の一つで、越国（高志国）に位置し、現在の新潟県新潟市東区にあったと考えられています。この城柵は大化3年（647年）に設立され、当時の国防の一角を担いました。また、沼垂城とも呼ばれ、地域の重要な防衛拠点として機能していました。

渟足柵の歴史的背景

渟足柵の設立時期は、645年の乙巳の変後に即位した孝徳天皇の治世に遡ります。大化の改新という体制改革が進行する中、大化2年（646年）正月1日に改新の詔が発表され、翌年には蓄積された国防の必要性を反映する形で渟足柵が設置されました。この城柵にはزر柵戸も置かれ、国境の防御が強化されました。

647年に設立された渟足柵は、その前年の大化2年に行われた改革の結果、国境を守るための重要な施設となりました。翌大化4年（648年）には磐舟柵も設けられ、特に蝦夷の脅威に対抗するための体制が整えられました。この時期には、陸奥国においても複数の城柵が築かれ、国の安全が確保されていたことが分かります。

渟足柵と蝦夷

文献によると、斉明天皇4年（658年）7月4日、渟足柵の設立に関与した大伴稲積が蝦夷への朝献に際して冠位を授かる場面があります。このことは、渟足柵が蝦夷との交流において重要な役割を果たしていた可能性を示唆しています。また、阿倍比羅夫が北方への航海を成功させた結果、多くの蝦夷が渟足柵に招かれたことも伝えられています。

近代の発見

1990年には、三島郡和島村（現・長岡市）の八幡林遺跡で「沼垂城」や「養老」という文字が書かれた木簡が発見され、これにより渟足柵が養老年間（717年 - 723年）に沼垂城として存在していた可能性が高まっています。また、慶雲2年（705年）の越後城が渟足柵に改名されたという説も存在します。

渟足柵の立地

渟足柵の位置は、平安時代の『倭名類聚抄』に基づいて沼垂郡に所在していたと考えられています。この地は信濃川と阿賀野川の合流点近くに位置し、水運が重要であった当時の越（高志国）の実情に適した環境でした。ただし、冬季や水運が利用できない際の食糧確保が課題となるため、必ずしも平坦な場所とはいえない面があったと言えます。

沼垂町は歴史の中で河道の変化が影響し、近世の初めに何度も場所が変わりました。最初の候補地は新潟市東区の王瀬であり、ここで古代の水田跡が発見されています。しかし、明確な立地の確定には至っておらず、渟足柵の正確な位置はまだ不明です。

結論

渟足柵はその歴史的背景および防衛的役割から、古代日本の重要な文化遺産の一つといえます。防衛拠点としての機能の他、蝦夷との交流を通じた文化の相互作用も示唆されるこの城柵の研究は、古代日本の社会構造や地域の歴史を理解する上で重要な鍵となるでしょう。

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