源光国

源光国（みなもと の みつくに）は、平安時代後期に活躍した武将です。
伊豆守を務めた源国房の長男として生まれ、はじめは師時と名乗っていました。

略歴

彼の経歴は、朝廷の武官としての歩みから始まります。寛治元年（1087年）、左兵衛尉から右衛門少尉へと昇任しました。さらに、寛治5年（1092年）には、当時の実力者であった白河院の鞍馬寺への参詣に随行するなど、院近臣としての側面も見せています。

検非違使に任じられていた嘉保元年（1094年）には、京で大規模な火災が発生した際に、光国の従者が前天台座主良真の西京の邸宅へ押し入り、強盗を働くという事件が起きています。これは当時の武士が抱える治安問題の一端を示す出来事と言えるでしょう。

康和元年（1099年）の正月には叙爵を果たしますが、この時に地方の長官である受領の地位を得ることは叶いませんでした。

その後も白河院への近侍は続き、康和5年（1103年）の宗仁親王（後の鳥羽天皇）の立太子式や、嘉承元年（1106年）の石清水八幡宮への参詣にも、大夫尉としてお供しています。このように、彼は一定期間、白河院の身辺警護や行事への随行といった重要な役割を担っていたことが伺えます。

次第に地方の要職も務めるようになり、出羽守に任じられました。天仁2年（1109年）に発生した源義綱とその一族に対する追討事件では、同じ源氏の武将である源為義と共に追討軍の一員として参加しています。これは、当時の武士社会における血縁を超えた勢力争いや朝廷の動向を示す事例です。

事件後、任国である出羽国へ赴きましたが、天永元年（1110年）、摂関家の広大な所領であった出羽国寒河江荘に不法に立ち入り、さらに任国を無断で離れて自身の所領がある美濃国へ帰ってしまうという問題行動を起こしています。これは地方官としての職務放棄にあたる行為であり、その背景には何らかの事情があったと推測されますが、詳細は不明です。

都に戻った後も、武士としての役割を求められます。天永4年（または永久元年）（1113年）に、延暦寺と興福寺という有力寺院が朝廷に対して大規模な強訴を起こした、いわゆる「永久の強訴」においては、平正盛や源為義といった他の有力武将たちと共に、朝廷側の防衛にあたっています。これは、白河院政期における寺社勢力の強力な影響力と、それに対抗する武士の役割を示すものです。

また、自身の私領に関する問題も抱えていました。永久5年（1117年）および天治元年（1124年）には、父国房から受け継いだ美濃国内の私領である鶉郷の郷司や住民らが、隣接する茜部荘の領家である東大寺から、自領への侵入や押妨行為を継続しているとして訴えられました。しかし光国は、侵入の事実はなく、狼藉については自身が都にいるため詳しくは知らないと主張し、係争を長引かせています。これは当時の複雑な荘園制度や土地所有を巡る紛争の一例と言えます。

長い生涯を送り、久安3年（1147年）に85歳でこの世を去りました。武門として朝廷に仕える一方で、郎党の事件や任国での問題、そして自身の所領を巡る争いなど、波乱に富んだ人生を送った人物と言えるでしょう。

系譜

父：源国房
母：木工大夫正中の娘
妻：左衛門尉家実の娘
長男：源光信（1093?-1145）
光信妻：大中臣輔清の娘
男子：源光保（?-1160）
生母不明の子女：源光成、源全（多田禅師）

参考文献

宮崎康充「古代末期における美濃源氏の動向」（『書陵部紀要』第30号、宮内庁書陵部、1979年）
* 横山住雄『美濃土岐氏―平安から戦国を駆け抜けた本宗家の戦い』（戎光祥出版、2024年）

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