源顕基

源顕基（みなもと の あきもと）は、平安時代中期の公卿であり、醍醐源氏の流れを汲む高明流の出身です。権大納言・源俊賢の子として生まれ、後一条天皇の側近として重用されました。最終的な官位は従三位・権中納言にまで昇りました。

経歴

顕基は、三条朝初期の寛弘8年（1011年）に従五位下に叙爵し、官吏としてのキャリアをスタートさせました。その後、長和2年（1013年）には侍従、次いで右兵衛佐に任官し、同年、左大臣・藤原道長が賀茂社に参詣した際にはこれに随行しました。長和3年（1014年）には左近衛少将に任ぜられ、以降、長和4年（1015年）に従五位上、長和5年（1016年）に正五位下、寛仁2年（1018年）には従四位下と、近衛少将を務めながら順調に昇進を重ねました。

治安3年（1023年）には従四位上・右近衛権中将に叙任され、同時に後一条天皇の蔵人頭に任命されました。翌万寿元年（1024年）には正四位下に叙せられます。この間、治安4年（1024年）には顕基の従者が左兵衛佐・源資通の従者と闘乱を起こしたため、勘事処分を受けるという事件も起こっています。また、長元元年（1028年）には、顕基の従者が盗賊に射殺されるという悲劇にも見舞われました。

長元2年（1029年）には従三位・参議に叙任され、公卿の仲間入りを果たしました。参議昇進後も引き続き近衛中将を務め、周防権守、伊予権守といった地方官も兼任しました。長元8年（1035年）には権中納言にまで昇進しますが、翌長元9年（1036年）4月、後一条天皇が29歳で崩御されると、天皇の側近であった顕基は「忠臣は二君に仕えず」として出家し、俗世との縁を断ちました。

後冷泉朝の永承2年（1047年）9月3日に、48歳でその生涯を閉じました。

人物・逸話

顕基は、風流を愛する貴公子として知られ、多くの説話が残されています。特に有名なのは、彼が日頃から「咎なくて流罪とせられて、配所にて月を見ばや」（無実の罪で流罪になり、配所で月を眺めたいものだ）と語っていたという逸話です。この言葉は、彼の独特な美意識と、不遇な境遇に対する憧憬を示していると考えられています。

官歴

以下に、『公卿補任』に基づく顕基の官歴をまとめます。

寛弘8年（1011年）10月16日：従五位下に叙爵
長和2年（1013年）正月24日：侍従、10月23日：右兵衛佐
長和3年（1014年）3月3日：左近衛少将
長和4年（1015年）正月7日：従五位上（少将労）、2月18日：兼備前介
長和5年（1016年）正月6日：正五位下（皇太后宮御給）
寛仁2年（1018年）正月5日：従四位下（少将労）
寛仁4年（1020年）正月：兼播磨介
治安元年（1021年）3月8日：兼周防権介
治安3年（1023年）正月6日：従四位上（少将労）、2月12日：右近衛権中将、12月15日：蔵人頭（頭中将）
万寿元年（1024年）9月19日：正四位下（父卿中宮大夫賞譲之）
万寿3年（1026年）10月26日：左近衛中将
万寿4年（1027年）6月13日：服解（父）、7月：復任
長元2年（1029年）正月24日：参議、中将如元、兼周防権守、12月20日：従三位（八幡加茂行幸行事賞）
長元8年（1035年）正月30日：兼伊予権守、8月：服解（母か）、10月：復任、10月14日：権中納言
長元9年（1036年）4月22日：出家
永承2年（1047年）9月3日：薨去

系譜

父：源俊賢
母：中納言の君 - 藤原忠君（忠尹）の娘
妻：藤原実成の次女（?-1025）
長男：源資綱（1020-1082）
妻：藤原行成の長女
生母不明の子女
男子：源俊長
男子：源俊相

参考文献

『日本人名大辞典』講談社、2001年
松本昭彦「配所の月を見る人 - 菅原道真の境地・源顕基の思い -」『三重大学教育学部研究紀要 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学・教育実践 71』三重大学教育学部、2020年

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