準・メルクル

準・メルクル (Jun Märkl)

準・メルクルは、1959年2月11日にドイツのミュンヘンで生まれた、ドイツを代表する指揮者の一人です。ドイツ人の父と日本人の母を持つ彼は、幼少期から音楽に囲まれた環境で育ち、その才能を開花させました。

経歴

ハノーファー音楽演劇大学でヴァイオリン、ピアノ、指揮を学び、セルジュ・チェリビダッケに師事しました。この時期に培われた音楽的基礎と、チェリビダッケからの薫陶が、彼の後のキャリアに大きな影響を与えました。

1991年にザールラント州立劇場の音楽総監督に就任し、その手腕を発揮。その後、1994年から2000年までマンハイム国民劇場音楽総監督を務め、着実にキャリアを積み重ねました。

オペラ指揮者としての国際的な舞台へのデビューは1993年、ウィーン国立歌劇場での「トスカ」の指揮でした。1999年には、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で『イル・トロヴァトーレ』を指揮し、アメリカでの評価を確立しました。2000年には、ウィーン国立歌劇場日本公演でレハールの『メリー・ウィドウ』を指揮し、日本でもその名を知られるようになりました。

近年では、ロイヤル・オペラ・ハウス、ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、ゼンパー・オーパー、サンフランシスコ歌劇場など、世界の主要な歌劇場でオペラ指揮者として活躍しています。

オーケストラの指揮にも意欲的で、2005年にはリヨン国立管弦楽団の音楽監督に就任。2007年9月からは中部ドイツ放送交響楽団（ライプツィヒ）の首席指揮者を務めました。2021年より台湾フィルハーモニック（国家交響楽団）の音楽監督、2024年よりインディアナポリス交響楽団の音楽監督を務めています。北ドイツ放送交響楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、パリ管弦楽団、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団、クリーヴランド管弦楽団、水戸室内管弦楽団など、世界各国の著名なオーケストラにも客演しています。

NHK交響楽団との関係

準・メルクルは、NHK交響楽団とも長年にわたり良好な関係を築いています。1998年4月の定期公演「世界の若手指揮者たち」で初めて指揮台に立ち、その後も定期的に客演を重ねています。1999年12月にはベートーヴェンの『第九』公演を指揮し、2001年1月にはヘンツェ作曲『ヴィーナスとアドニス』を指揮しました。近年では、マーラー交響曲第2番『復活』やベートーヴェン『荘厳ミサ曲』など、合唱を伴う大作も指揮しています。

また、新国立劇場では、2001年3月にワーグナーの楽劇『ラインの黄金』で東京フィルハーモニー交響楽団を指揮し、『ニーベルングの指環』サイクル（トーキョー・リング）を開始しました。その後、2003年と2004年には、NHK交響楽団の演奏でそれぞれ『ジークフリート』と『神々の黄昏』を指揮し、ワーグナー作品への深い理解を示しました。

2008年4月には、NHKホールでグリンカの歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲、中村紘子のピアノによるセルゲイ・ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、シェーンベルクの交響詩『ペレアスとメリザンド』、メシアンの『トゥランガリーラ交響曲』を指揮しました。2009年6月には、ラロの『スペイン交響曲』、ラヴェルの『ボレロ』、メンデルスゾーンの『夏の夜の夢』全曲を指揮しています。2024年１月には、Bunkamuraオーチャードホールにてブラームス交響曲第１番ハ短調を指揮しました。

水戸室内管弦楽団との関係

準・メルクルは、水戸室内管弦楽団との関係も非常に深く、ポストを与えない同楽団の客演指揮者の中で、毎年登場している唯一の存在です。2004年の初登場以来、東日本大震災が発生するまで5年連続で登場していました。近年はベートーヴェン・チクルスが進行中で、プログラムのメインにベートーヴェンの交響曲を据える一方、前半にはリヒャルト・シュトラウスやドビュッシーなど、編成の大きな作品を配置することが多いです。

東日本大震災後の来日時には、親から譲り受けたヴァイオリン4台を水戸市へ寄贈しました。水戸芸術館では「準・メルクル 弦楽器貸与プロジェクト」と題し、30歳以下の茨城県内在住の演奏家を対象に、これらの楽器を貸与しています。

外部リンク

公式ウェブサイト
準・メルクル （指揮） ～ 所属事務所 AMATI - アーティスト情報

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