漢口邦人巡査射殺事件

漢口邦人巡査射殺事件

漢口邦人巡査射殺事件（かんこうほうじんじゅんさしゃさつじけん）は、1936年9月19日に中華民国の漢口で発生した日本人領事館警察官に対する殺害事件であり、一般には漢口事件としても知られています。この事件は、当時の中華民国における国際的な緊張を一層高める要因となりました。

背景

事件が起きた1930年代中盤、中国では中国共産党の活動が活発になり、反日感情が広がりました。このため、抗日運動やテロ事件が相次いで発生していました。特に、中華民国の大都市では日本人を狙った一連の事件が続き、1935年1月には汕頭での邦人巡査射殺事件、1936年に入ると、上海での邦人商人や中山水兵に対する襲撃が相次ぎました。

事件概要

1936年9月19日午前11時30分、漢口の日本租界に位置する日本総領事館の第9号見張所で待機していた巡査・吉岡庭二郎（長崎県出身）は、付近の煙草屋の店主と談笑していました。このとき、37、8歳と推測される中国人が近づき、隠し持っていた拳銃を使って、至近距離から吉岡巡査の左頚部を襲撃し、即死させました。

事件の直後、日本総領事館は揚永泰州政府や呉市長に対し、事件の報告と犯人の逮捕に向けた協力を要請しました。9月22日には三浦義秋総領事が揚永泰州政府主席と会談し、一連のテロ事件の背後に中国側の責任があると指摘しましたが、揚永泰は中国側の責任を否定し、犯人捜査には協力すると応じました。このやりとりは、日本と中国の関係をさらに悪化させる結果となりました。

事件の影響

事件の翌日、つまり9月23日には、上海共同租界で日本海軍の水兵が中国人によって銃撃を受け、死傷する事件が発生しました。この事件を受けて、日本政府は日本人居留民の保護を理由に、3個大隊の陸戦隊を急遽派遣しました。この事態により、当時の中国国民党政府の蔣介石は、軍事的準備を進めるよう命令を下しました。

その後の動きとしては、10月5日には蔣介石と川越茂大使との会談が行われましたが、日中間の問題は依然として解決されませんでした。日本側は強硬策を強化する必要があるとの意見を持っていましたが、蔣介石は日中友好の重要性を訴えたものの、実際には状況が悪化していきました。

11月には日比野洋行襲撃事件が起こり、さらに不安定な状況が続きました。12月に蔣介石が監禁される西安事件に至るまで、中国と日本の関係は緊張を高め、1937年には多数の日本人居留民が標的とされる襲撃事件が散発的に起こるようになりました。この流れは、第二次上海事変に発展し、最終的には日中全面戦争へと繋がっていきました。

まとめ

漢口邦人巡査射殺事件は、ただの犯罪事件に留まらず、日中関係の緊張を象徴する出来事として歴史に刻まれています。この事件が引き金となり、日本と中国の対立は深まり、その後の歴史に大きな影響を与えることとなりました。

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