火刑台上のジャンヌ・ダルク

オラトリオ『火刑台上のジャンヌ・ダルク』

『火刑台上のジャンヌ・ダルク』（原題：Jeanne d'Arc au bûcher）は、フランスの劇作家ポール・クローデルが台本を、スイスの作曲家アルテュール・オネゲルが作曲を手がけたオラトリオです。この作品は、舞踏家イダ・ルビンシュタインに捧げられ、1954年にはイタリアとフランスの合作で映画化もされています。

概要

フランス語原題：Jeanne d'Arc au bûcher, Oratorio dramatique ― Poème de Paul Claudel
日本語訳：劇的オラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」―ポール・クローデルの詩による
演奏時間：約1時間20分
作曲時期：1935年、1941年（プロローグ）
初演：1938年5月12日、スイス、バーゼル（演奏会形式）。舞台初演は1942年6月3日、スイス、チューリヒ市立劇場。

登場人物

この作品は、俳優と歌手によって演じられます。主要な登場人物は以下の通りで、これらの役は歌手ではなく俳優が演じます。

ジャンヌ・ダルク
修道士ドミニク

あらすじ

物語は、ジャンヌ・ダルクが火刑に処される前夜から始まります。修道士ドミニクが、ジャンヌの裁判記録を記した書物を携えて彼女のもとを訪れます。そこから、ジャンヌの過去の回想が始まります。異端審問で野獣のように扱われる裁判、王たちの策略によってイギリスに引き渡される場面、ランスでの戴冠式に向かう栄光の日々、そして子供の頃の思い出などが描かれます。夜が明け、ジャンヌは火刑に処されるという現実に戻ります。

編成

この作品は、多彩な楽器を含むオーケストラ編成で演奏されます。ホルンは含まれません。

木管楽器：フルート2、オーボエ2、クラリネット（B♭管1、E♭管1、バスクラリネット1）、アルトサクソフォーン3（3番はテナーサクソフォーンでも可）、ファゴット3、コントラ[[ファゴット]]1
金管楽器：トランペット（C管3、ピッコロトランペットD管1）、トロンボーン3、バストロンボーン1（チューバでも可）
打楽器：ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、トライアングル、タムタム、ウッドブロック、ラチェット
鍵盤楽器：ピアノ2（第6景では、弦の上に鉄の棒を置き、チェンバロの音色を模倣）、チェレスタ
その他：オンド・マルトノ
弦楽器：弦五部
合唱・独唱：混声四部合唱、児童合唱、ソプラノ独唱2（プロローグの独唱は除く）、アルト独唱、テナー独唱、バス独唱、子供の声。独唱は「子供の声」を除き、複数の役を兼ねます。
俳優・パントマイム：ジャンヌ・ダルク、修道士ドミニクなど数名（掛け持ち可）

構成

作品はプロローグと11のシーンで構成され、連続して演奏されますが、それぞれのシーンは時間軸に沿ってはいません。

1. プロローグ：低音楽器で始まり、百年戦争で苦しむフランス民衆の心情を合唱が歌います。「ジャンヌという娘がいた！」という声が響きます。
2. 天の声：天国からジャンヌを呼ぶ声が聞こえます。
3. 一冊の書：聖ドミニクが真実を記した書物を持って現れ、ジャンヌは書物を読んでもらいます。
4. 地の声：「魔女」「神の敵」と罵倒する人々の声にジャンヌは怯えます。ドミニクは、野獣のような者たちによる裁判の結果だと説明します。
5. 野獣に引き渡されたジャンヌ：野獣による裁判が開廷します。裁判長は豚、書記はロバ、陪審員は羊です。ジャンヌの証言は改竄され、死刑判決が下されます。
6. 火刑柱に付けられたジャンヌ
7. 王たち、またはトランプ遊びの考案：ジャンヌがイギリスに引き渡される経緯が、王たちのカードゲームとして戯画化されます。
8. カトリーヌとマルグリート：ドンレミ村の少女だったジャンヌが、聖カトリーヌと聖マルグリートのお告げにより、フランス王を救う戦いに身を投じる場面です。
9. ランスに向かう王：ジャンヌの活躍によって、王太子シャルルがランスで戴冠式を行うため、街の人々が祝います。小麦を擬人化した「ウルトビーズ」とワインを擬人化した「酒樽母さん」の再会は、南北フランスの再統一を象徴します。
10. ジャンヌの剣：ジャンヌが、聖カトリーヌと聖マルグリートの声に従い、教会で剣を手に入れた時のことを語ります。
11. トリマゾ：子供たちが歌っていたトリマゾの歌を、ジャンヌがソロで歌います。
12. 炎の中のジャンヌ・ダルク：群衆の怒号の中、ジャンヌが火刑に処されます。聖母が現れ、ジャンヌを天国に招きます。炎の中でジャンヌは鎖を断ち切り、天に召されます。合唱が「愛するもののために自分の命を犠牲にするほど大きな愛はない」と歌い、静謐な響きで幕を閉じます。

映画

1954年には、ロベルト・ロッセリーニ監督、イングリッド・バーグマン主演で、オラトリオを基にした映画『火刑台上のジャンヌ・ダルク』が制作されました。

監督：ロベルト・ロッセリーニ
原案：ポール・クローデル
原作：アルテュール・オネゲル
脚本：ポール・クローデル、ロベルト・ロッセリーニ
音楽：アルテュール・オネゲル
出演：イングリッド・バーグマン、トゥリオ・カルミナティ、ジャチント・プランテルリ、アウグスト・ロマーニ

関連情報

サイトウ・キネン・フェスティバル松本：2012年に上演。
草笛光子：日本初演でジャンヌ・ダルク役を演じた。

参考文献

小澤征爾指揮フランス国立管弦楽団 CDブックレット（1991年 PROA-37）
サラベール版スコア

外部リンク

火刑台上のジャンヌ・ダルクの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
火刑台上のジャンヌ・ダルク - allcinema
火刑台上のジャンヌ・ダルク - KINENOTE
Giovanna d'Arco al Rogo - オールムービー（英語）
Giovanna d'Arco al rogo - IMDb（英語）

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